だからその意味で、中間層というのは、一見非常に強くみえるけれども、意外と総選挙をやってみるとそうでもなかった。実は本当にカウントするのは、そういう中間層というのは関係なくて、イスラムの、例えば改革の大組織が握っているグループだとか、保守派の大組織を握っているグループだとか、あるいはメガワティのようにお父さんのイメージがあって、それで票が取れる人でしょうね。そういう話になると思っています。
D 産経新聞のDと申します。大変緊迫したお話をありがとうございました。2つほどお伺いしたいのですが、やはりこの人のことを聞いておかないとなにか気が休まらないというか、スハルト自身のことです。
白石 はい、いい質問ですね。
D それからもう1つは、日米の話が出ましたけれども、東南アジア諸国はどうみているのか。例えばフィリピンのナンフラルというところでは、選挙監視団を送りたいとか、受け入れろみたいな提案をしていると思うのですが、そういうことを含めてお願いいたします。
白石 スハルトはもちろん極めて活発にやっております。選挙をやられて一番困るのは誰かというと、スハルトなんですね。ですから、スハルト自身が本当にどこまでやっているかは別にして、スハルトの子供、あるいは腹違いの弟などが金を出して、それでヤクザが動いて、それでいろいろなところで火をつけているのです。これは別に彼らだけがやっているとは言いません。いろいろな土地、土地に様々なマフィアがいて、ミニ・スハルトが攻撃されると、このマフィアが動いて、攻撃している連中を攻撃する。そこにスハルトの子供やなんかが金を出していろいろなことをやらせているという面があるので、非常に複雑なのです。でも、例えば現に起こっているアンボンで火をつけたのも、スハルトの子供と非常に親しいポムダ・パンチェシラというヤクザのグループでありまして、このグループがやっていると私は思います。
ですからその意味で、スハルトは未だに動いています。総選挙をやって、もう本格的な政権ができて、そういう策動の余地がなくなるというのが、恐らく唯一のスハルトを封じ込める道でしょうし、逆に言うとスハルトはそれが一番怖い。で、特にそこでハビビではなくて、アミン・ライスだとかメガワティが出てきて、スハルト指弾追及というのが本格的に始まるのが一番怖い。