日本財団 図書館


このグループというのは、実はそれほど打撃を受けておりません。中間層といっても中の中の上ぐらいのところですね。実は一番打撃を受けていて、これから先のインドネシア政治の帰趨を制するのは、特にジャカルタやスラバヤのような大都市の中間層の下の層ですね。大体中の下ぐらいのところで、ホワイトカラーですとか、あるいは工場労働者としてなかなか生活がよくなってきたところで、失業して今大変な目にあっているという人たち。

少なくも、世銀のディレクターのベアードなどと話していますと、彼はそのことはよく分かっていまして、昨年のソーシャル・セーフティ・ネットのときには、これはインドネシア全体でおしなべてやろうとした。けれども考えてみると、先ほど私が言いましたように、有力な輸出部門をもっているところは要らないわけですね。それからジャワの中部の非常に貧しい人というのは、これは経済危機があろうがなかろうが常に貧しい。そうではなくて、政治的に一番大事なのはジャカルタやスラバヤの中の下ぐらいのところの人で、こういうところに手厚く金をつけるということを言っています。ですから、それは世銀としても分かってそのうえで対応策をとっているし、インドネシア政府の方ももちろん分かっているという話だと思います。

C あともう1つ、権限と資源の配分に関して、これまでの中央集権から中央と地方のバランスをどう考えていくか。一種の過渡期または選択をする時期にきたという観点から、日本もこれまでジャカルタを中心とした情報収集だったりアプローチだったわけですが、さはさりながら、ただでさえ左右をとればアメリカ大陸と同じような広い国土を、知的ネットワークの弱い日本が、そのインドネシアの全国津々浦々多様な意見を汲み上げるネットワークをすぐに確立せよといっても、これまた大変な大事業かと思われるのですが、先生はようなこの多様なネットワークをうまくどう…。

白石 実は情報収集ということから申し上げますと、日本政府のほうがアメリカ政府よりはるかに良いネットワークをもっているのです。これ日本政府っていう言い方はよくないですね。日本の政府と民間と両方合わせますと、今の主なプレーヤーには全部どこかに日本の親しいグループがおります。だからハビビ側にはどこかにお友達がいますし、アクバル・タンジュンにもギナンジャールにも友達がいる。日本政府としてはそのどこかを使いながら、このボタンを押すとここに通じるというようなことをやれば良い。ところがアメリカ政府は、例えばハビビに対していいアクセスはもっておりません。ですからむしろ、ハビビの敵のところからいっぱい情報が入ってくるので、アメリカ政府のなかではハビビというのは、あれはいやな奴だという印象をもっているわけですね。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION