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それからもう1つは、軍の政治的役割をこれもとりあえずは承認するということを言います。これが私がここで「権力共有」と書いていることですが、つまり軍はバックに戻れ、軍は政治的な役割を一切するなということになりますと当然軍は抵抗しますので、そうではなくて軍はとりあえず政治的役割を認めますというかたちで、政府と反政府勢力のこの中道グループがなんとか自分たちの立場を維持して、とりあえず左派と右派が街頭で衝突して訳の分からなくなるような事態を避けるということが起こったのが98年の11月です。

このときに、ハビビはもう自分は改革だなんてことは言わなくなる。これは恐らく何らかのディール(取引き)があったのだと思いますが、ハビビはここから後は自分は次の政権までのつなぎですということしか言わなくなる。

それではこれから先どうなるかというと、短期的と長期的と両方ございます。政治的スケジュールが分かっているところを、短期的だと考えてください。政治的なスケジュールが分かっているところとはどこかといいますと、今年の6月に総選挙をやる、11月に大統領選挙をやる、これはひょっとしたら早まるかもしれません、私は恐らく早くなると思っています。それから次に来年の5月か6月に地方選挙をやる。つまり、これから1年ないし1年半に大きく3つの選挙がありますが、これらの選挙が全部きちっとできて、国民がそういう選挙を正当だと認めれば、次の体制に対する移行がこれから1年半ぐらいの間に成立するということになると思います。これが短期的。

それから先、5年とか10年ぐらいに何が起こりそうかということが、長期的だと考えていただければいいのですが、まず短期的に大きい問題というのは何かというと、これはもう非常に単純です。要するに今年の6月の選挙をやって政党政治が初めて戻ってくるという話です。今まで政党というのは全然重要ではなかったわけですね。ところがこの6月の選挙でもって、政党がインドネシア政治の主役としてもう一度復帰する。そのうえで政党を基盤にした政権ができるというのが、一番大きいポイントです。

それでは問題は、どのような政党が出てきて、何が争点になって、どういう政権ができそうかというのが、とりあえずのところの見所ということになりますが、インドネシアの世論調査はまったく信用なりません。例えば、ついこの間軍隊がどのくらい国民の信望を得ているかという調査があったのですが、この調査をやった所がジャカルタとアチェと東ティモールだけなんですね。そうすると、答えはもうみえているわけです。ですから、まだその程度のポーリングしかやっていないところですので、どの政党が何%ぐらいの票を取って出てきそうかということは一切分かりません。

 

 

 

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