この場合なぜ括弧を付けているかと言いますと、これは非常に単純でして、有力な輸出産業部門をもっている地域と、もっていない地域、例えば石油、ガスは全部スマトラだとかカリマンタンにございます。それから今インドネシアで非常にブームになっておりますヤシ油、パームオイルもこれはスマトラのプランテーションなどが中心であります。木材、これはカリマンタン。それから例えばエビの養殖、これはスラウェシです。ということで、基本的に経済危機のなかで特に通貨危機のなかでルピアがボーンと下がって国際競争力が落ちて、大変だ大変だといいながら、本当はもう儲かって儲かって仕方がない地域があるわけです。ほとんど全部外島です。
それに対して輸出部門が全然なくて、お米が足りなくてひょっとすると餓死者が出るのではないかと、ソーシャル・セーフティネットを提供することがともかく大事だということで、その対象になっているのがジャワです。ということは、例えば為替がどのように動くか、経済危機の影響というのはどうか、あるいはソーシャル・セーフティネットを提供するということ、これは世銀が中心になってこれまでやってきていますけれども、これでもってベネフィットを得ているのはどこか。すべて実は地域的に差があって、その地域の差というのは基本的にはジャワと外島というかたちで出てきているというのが1つ非常に重要な点です。
それからもう1つ地方で大事なことは、インドネシアというのはやはり非常に大きな島国で、民族をどのように定義するのか非常に難しいのですが、仮に言語でもって区別しますと、主な言語だけで300ぐらいございます。ですからよく言われることは、インドネシアというのはひょっとしたら、ひとつまかり間違うとアジアのユーゴスラビアになるんじゃないか、バラバラになってしまうのではないか、そのときには大変なことになるという議論があるわけですけれども、実際に東ティモールの問題というのはそういう文脈でよく議論されますが、私の判断は3つ注目しておく必要があるということです。1つは東ティモール、1つはイリアンジャヤ、1つはアチェです。
なぜこの3つかといいますと、東ティモールというのは1976年にそれまでポルトガルの植民地であったところがインドネシアによって併合されました。ですから、東ティモールの人たちというのは、自分たちはインドネシア人だとは天から考えていないわけですね。自分たちは、インドネシアによって植民地化された、だから独立ということで独立を要求する。
逆に言いますと、東ティモールを独立させるということはですね、これはハビビがつい1月27日に夜中の1時半に啓示を受けて決めた話だといいますけれども、ともかくこれは東ティモールだけの問題です。別に東ティモールが独立したからその連鎖反応でもって、ほかの地域が次から次へと独立を要求することにはならない。だからこれは、東ティモールだけの問題です。