まず第1は、先ほど申し上げたので繰り返しませんが、インドネシアの治安維持の一番の根幹は軍隊であるというのは実は誤りである。かつてスハルト時代には、軍隊というのはいわばインドネシアの治安の一番の大元だった。今はもうそうではない。これが、第1点ですね。
それから第2番目に、インドネシアの政治というのは、ジャカルタだけをみていればよい、ジャカルタでも大統領府と軍隊だけをみていればよいというのは、これはスハルト時代のインドネシアの政治です。ですから実際私なんか本当に過去14、5年ですね、スハルト時代には週に1日だけインドネシアの新聞、雑誌をみておりました。それも新聞全部は見ておりません。スハルトと軍のことだけみていれば大体7割ぐらいのことは分かっていた。今は、本当に隅から隅まで全部読まないと分かりません。なぜかというと大統領も力がない、軍隊も力がない、政党が力を増す、地方ではいろんなことが起こる。だからもうジャカルタをみていただけではだめで、アンボンもみなければならない、アチェもみなければならない、あらゆるところをみなければいけません。
それから政党もみなければいけない、いろいろな大臣の発言もみなければいけない、それからNGOの活動もみなければいけないということで、もうとてもじゃないくらいに1人ではやれないほど忙しくなっている。だからその意味で、政治が極めて多元化している。
第3番目に同じことですけれども、政治が単に中央の政治ではなくて、地方の政治がもろに中央の政治に影響を与えるような状況になっている。そうしますと、どうやってインドネシアの政治をみたらいいんだろうということになりますが、まずここでは2に載っているのですが、ジャカルタの政治と地方の政治、このダイナミズムがどうなっているのかということだけ申します。大きく挙げますと、言ってみれば括弧付きですが「外島」と「ジャワ」の対立というのが1つ重要なのではないかと思います。