最後に軍隊ですが、これは私、趣味なのでいくらでもしゃべることができますが、人事だけみておりますと、一番重要なポスト、軍の一番重要なポストで将官ポストというのが150ぐらいあります。この150ぐらいのポストの人事異動をみていますと、5月、6月と大体30人ぐらいずつ人事異動があります。それからそのあと9月、今年の1月にもう一度30人ぐらいずつ動きまして、その結果、プラボヴォとそのお友達はほぼジャカルタとその周辺の戦闘部隊のポストからははずれてしまいます。
どこに飛ばされたかというと、必ずしも軍から外にははずされていません。当初は私は、ヴィラントの側近の少将の人にああいう人はどうするんですかと聞いたら、あいつら全部追い出すと言っていたのですが、実は全然追い出されていないですね。むしろ2つのポストにはずされている。1つは、まだ大佐、あるいは准将クラスの若手ですね、年齢からいいますと40代の後半ぐらいです。これは、東ティモールだとかイリアンジャヤだとか、あまり行きたくない、実際にいろんな問題が起こっていてひょっとしたら大変なことになりかねないようなポストに飛ばされる。そこで本当にダーティー・ジョブをやらされる。もう1つは、これはもう少し歳をとっていて50ちょっとぐらいの人で、今さら地方のコマンダーをやらせるには歳をとり過ぎているという人は、ジャカルタの国軍司令部だとか、陸軍参謀本部のアドミニストレーションのポストですね、要するに自分の人間をもっていない、そういうポストにはずされる。
ですけれども、じゃあなぜ外に出されないかというと、外に出ると逆にコントロールできなくなる。そうすると何か妙な策謀をするんじゃないかということで、外には出さない。むしろ中にずっと置いておく。そのかわりに、ヴィラントのいわば信頼できる部下がジャカルタとその周辺の主な部隊を全部コントロールしています。それは具体的にいいますと、特殊部隊であるとか、陸軍の戦略予備軍であるとか、海兵隊であるとか、あるいはジャカルタ軍管区の司令官ポストかいうところですね。こういうのは全部ヴィラントの側近が抑えている。
ですからスハルト時代ですと、ハビビの同盟であるヴィラントが軍隊の主なところを全部抑えていますので、これで安泰ということになるのですが、安泰になりません。なぜかというと、単純に言いますと、かつてスハルト時代に軍がいっぱいダーティー・ジョブをやっている。それで汚れ仕事をやって、いっぱい人を殺していたんですね。どのくらい人を殺したのか分かりませんが、少なくとも大雑把にいいますと、スハルト政権が成立したときに、共産党系の人たちということで50万人ぐらい殺した。東ティモールで15万人から20万人殺した。