次に、第3番目にハビビがやったことは、これはスハルトの選挙マシーン、あるいは体制翼賛の機構でありますゴルカルというものを7月のゴルカルの大会で乗っ取ってしまいます。これはどういうことかといいますと、5月、6月の時点で、私先ほどハビビ政権は3ヵ月もたないと考えていたと申しましたのは、実は5月にスハルトが辞任してハビビが大統領になった当初から、ゴルカルのなかに旧軍人、それからスハルトの子供たち、それからかつて1970年代、80年代にゴルカルを牛耳っていた、例えば戦略国際問題研究所というのがあります、CSISというこれは中国系の組織ですけれども、こういうところが全部まとまって反主流派を構成します。この反主流派の連中がゴルカルの支部の大体70%を抑えておりました。このグループがゴルカルの全国大会を臨時に開催させて、そこで総裁にエリ・スーデェアラという元の国防大臣を選出して、この人が国会それから国民協議会からハビビ支持派の議員を次から次へとリコールして、そのあと国民協議会を開催してハビビを解任するというシナリオが、5月の末にすでにあったのです。
何しろ支部のレベルをみますと、7割ぐらいはこっちのグループが握っているものですから、私は勝負はついていると思ったんですね。ところがハビビは、実はウィラントが随分動くのですが、要するに1人1人の支部の代表者に会いまして、何を言ったかはもちろん分かりませんけれども「ハビビ支持じゃないとお前さん大変なことになるよ」みたいなことをやって、結局ゴルカルの臨時大会でエリ・スーデェアラが負けます。それでアクバル・タンジュンというハビビ支持派の政治家が、いわばゴルカルの総裁になって、そこでハビビがゴルカルを掌握してしまうんですね。
ですからそうすると、いわばスハルトがつくった選挙マシーン、体制翼賛機構を掌握してしまう、非常に権力が強くなるんです。ところがこれもそんなにもちません。なぜもたないかというと、中央でゴルカルを掌握したら、スハルト時代だったらそれで号令一下、インドネシアのすべてのゴルカルの機構がそのとおり動くのですが、ちょうどこの7月、8月ぐらいからインドネシアの地方でゴルカルの組織がぼろぼろ崩れていきます。