1つは改革ということで、実際に反政府勢力が要求するよりも一歩も二歩も前に、次から次へと改革の手を打っていきます。例えば新聞雑誌、言論の自由を大幅に拡大する、政治犯を釈放する、東ティモールに対して大幅な自治を与える、政党の設立を自由にやらせる等々、いろいろな政治向けの改革を、大統領に就任してから大体2週間の間に全部やってしまいます。ですから反政府勢力のほうが、改革でこういうことをやっていないという攻撃をするような意図を一切与えない。その結果、政権が非常に浮揚するわけですけれども、問題はそのあとなんですね。
どういうことかといいますと、言論、集会の自由が認められる、政党が自由に結成されるようになる等々が起こりますと、当然のことながらどんどん政党ができます。大体8月の末までに50ぐらいの政党ができ、年末までには100以上の政党ができます。新しいタブロイドの新聞だとか雑誌がどんどんと発行されまして、これがもう本当に1年前には想像もできなかったような暴露記事を次から次へと出すようになります。その結果、確かに改革をやった当初は、自分は改革政権だということで、改革をやることで政権を維持できたわけですけれども、時とともにどんどん弱みが暴露されていきます。そして次第に防戦に回っていったわけです。
2番目は、こういうふうに政治的に改革をやりまして、経済的にもIMFの要求どおりの、コンディショナリティどおりの経済政策を採るということを非常にはっきりと、これはギナンジャールがやったわけですけれども、その結果、大体6月の後半くらいにははっきりした国際的な支援態勢ができます。7月のCGIのときには、これは国際的な借款団のシステムですけれども、そのなかで非常にはっきりと対インドネシア支援、まあアメリカ政府は金を出したくないというのははっきりしていますけれども、それにもかかわらずともかく日本とIMF、それと世銀、それとADB、大体この4つが中心になって、国際支援態勢ができる。
これはいいんですが、それにもかかわらず、やはり経済はなかなか下げ止まらない。というか今でも覚えていますが、昨年の9、10月ごろの、例えば世銀であるとかIMFのエコノミストとかの発言というのは、インドネシアというのは未だにフリーフォームの状態であるという言い方がずっとされていたわけです。そういうことで経済危機が持続する。その結果、社会不安というものがどんどん深刻化していって、暴動であるとか宗教対立であるとか民族対立というものがあちらこちらでボンボンと起こってくる。
ですから、ここでも、国際支援態勢はできるけれども、それで危機に歯止めがかからず、なんだこの政権はどうなっているんだということになる。