もう1つの争点というのは東ティモールの問題で、この東ティモールの問題というのは今日、明日にも国連でこれに対する対応策が出てきますが、ひょっとするとかなり深刻な内戦状態が近いうちに始まるかもしれません。そのときにオーストラリア政府はすでに治安維持のための軍隊派遣を、内々に承諾しております。これはアメリカの国務省がオーストラリア政府と接触したら、そういう答えがすでに返ってきたということを私聞いておりますけれども、日本としてもこの問題については恐らく何らかの対応を近いうちに取らざるを得なくなってくるのではないかと思います。
というのはちょっと前置きでして、そういう極めて短期的に大きな問題があるなかで、じゃあインドネシアの情勢というのは今どうなっているのかということをお話しするというのが、今日の私の話の主旨でございます。
ご承知のようにインドネシアでは、昨年の5月21日にスハルトが大統領を辞任しまして、それでハビビ政権が成立しました。ハビビ政権というのは私自身、成立当初これは恐らく3ヵ月もたないだろうと公然と言っておりまして、それがインドネシアの新聞にも出て、それであるときハビビに会いましたら、お前は私をアンダーエスティメートしていると公然と言われ、いやそうでもないんだけれどもと冗談にしたことがあるのですが、いずれにしましても案に相違しまして現在までずっともっている。
どうしてなのか。私の判断が明らかに間違っていたわけです。どうしてハビビという人は、あれだけ弱い勢力基盤でありながら、現在までもってきたのか。まず間違いなく、よっぽどのことがない限り今年6月の総選挙の後までもつと思うのです。どうしてそういうことになったのか。けれども、それにもかかわらずだんだん弱くなったのは間違いないですね。それで、どうしてなのかということを考えるときに、ハビビ政権というのは暫定政権だというけれども、この暫定性というのには2つの意味があったのだというように思います。
それはどういうことかといいますと、これはハビビ自身が大統領に就任したあとの演説を少し注意深く読みますと、かなりはっきりしているのですが、2つの意味で自分の政権を意義づけております。1つは、自分の政権というのは改革と開発をやる政権である。つまりスハルト体制というのは、安定と開発を大義名分としております。それに対して、ハビビ政権は改革と開発を任務とする。どういうことかというと、スハルトの安定と開発の政治というのは決して間違いではなかったけれども、スハルトがだんだん歳をとってきて、子供が大きくなって、子供が好き勝手なことをやり始めたら、その結果として本来良いはずの体制の一部に癌ができてしまって、この癌がどんどん増殖してそれで体制自身がうまく機能しなくなってしまった。