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ここまでは、恐らく日本で我々がインドネシアについて考えている問題と同じ判断だと思うのです。問題はその先なんですね。それで、私が昨年カンボジアでフン・センが選出されたときに、日本とアメリカの間で起こったことを念頭において、じゃあハビビが勝ったらどうなるのかとたずねると、ここが彼らにとって一番悩ましいところで、理想的に言えば負けたほうがいい。ハビビが負ければ、まず間違いなくインドネシアの国民は、この選挙というのは自由で公正なものであったと認めるだろう。これは非常に分かりやすい議論なんですね。問題は勝ったときで、それは勝ち方による。

仮に50%以上の票をゴルカルが得てそれで勝てば、そのときにはやはり選挙に不正があったというふうにインドネシアの国民が言うだろうし、おそらく我々もそう考えるだろう。これは僕もそう思うのです。ゴルカルが50%以上取るような選挙というのは、ちょっと考えられない。これはあとでも少し述べますが、例えばついこの間カリマンタン、ボルネオの東のほうの州ヘアクバルタン、ゴルカルの総裁が行ってゴルカルのキャンペーンをやったのですが、そのときに東カリマンタンにいる約千人のゴルカルの県、郡、村のレベルの世話人の94%が一斉に辞任したのですね。だからそれで、ゴルカルの組織がガラガラになっているのです。そういう状態が現に起こっているので、そういうところで50%以上票を取ることはないだろう。仮に取ったらやはりおかしいと日本としても言わざる得ないのかなと思うのですが、問題は30%とか40%取って、それで有力政党の1つになって、それも恐らく第1党になって、そこでハビビが大統領に選出されたらどうなるか。

どうも雰囲気としてアメリカ政府は、やはりおかしいと言うのではないかという感じなんですね。そのとき日本政府は言わないと思うのです。これはインドネシアの国民が正当にやった選挙で、それについてそんなに大きな反対は出ていないのではないかということになると、これについてそのときにもう1点東南アジア政策をめぐる日米対立の1つの大きい争点になってくる。なにしろお金を日本が出しているものですから、そこでアメリカ政府が何かかき回すようなことをすると、少し問題が起こるかなという非常に心配しながら (アメリカから) 帰ってまいりました。

 

 

 

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