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そうしたときに、ほんとうのセーフティ・ネットがないということを、彼らはまだ自覚できないんですね。今、先生のおっしゃったことで、ほんとうに落っこちてきたときに、例えば40代の人に1年間……、今は半年ですけど、1年間の失業給付をするかとか、それからほんとうに職業紹介を自由化するかとか、そういうのが、まだ全然想像ができないんですね。押されてそっちのほうを向いていますけど。そこで労働省は全部とまってい。

もっと基本的なことは、先生が後段におっしゃったことは、彼らは全く想像の外なのです。つまり産業につなげるということがわからない。これは、省庁の縦割りのせいでもあるんです。労働省は気の毒に、雇用保険法というので雇用保険の予算しかもらっていない。ですから、わかりやすく言うと、失業が出ているというのは現実的なものですね。そうすると、労働省に与えられている予算というのは、おしりの穴にコルクを突っ込むという、そういう予算しかない。胃腸を治す予算はないんですね。こっちは通産あるいは大蔵なんですね。そっちのほうには想像が及ばない。

通産の官僚も、私、実はさっきの株の話でお伺いしたいのですが、通産の官僚たちも、今度、産業再生計画とかいうのつくっていますでしょう。あれも、ちょっと教えていただきたいんですけど、僕から見るとね、なるほど、頭のいい人たちがいろいろ机の上で、役所としてできそうなことをずっと書いてるんですがね、あれは産業は再生しないだろうなという感じなんですね。

鈴木 あれはいつものやつですね。

B ええ。ですから、やっぱり彼らは産業をわかっていないんですね。特に最近の通産官僚は。産業も企業も。

ですから私は、官僚がどう反応するかというと、確かに底は見た。確かに形の上では利益が出ます。それを株価が、ほんとうにどう反応するのか。私は、今、日本で非常に大きな問題は、みんなものすごい過剰設備、過剰能力を抱えているけれどお客さんが来ない。お客さんが来ないのは、単に景気が悪いからじゃなくて構造変化についていっていないんですね。旧型の需要構造に合わせた供給構造。特にひどいのは生活直結産業ですね、製造業よりも。

 

 

 

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