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そういう中で、今井先生は政務次官をしておられるわけですが、企画庁の堺屋長官は、去年の7〜9月だか10〜12月だかに、底入れしたという言い方をしている。変化の胎動から、最近は底入れと。僕は、言葉の使い方を間違えているなと思うのです。底入れというのは、底を打って上がってくることであって、そこに達したというんだったら、「底入れ」と言ってはいけない。まだ底をはってますとか、(笑) 底を打ったとかと言わなきゃいけない。底入れと言ったら、上がってくることですね。僕は、これは違うなと思います。底入れではないと思うんですね。

確かに、去年の11月を中心に、ちょっとした動きが出ました。図表2を見ていただきますと、一番左の百貨店・スーパーの売上高の前年比マイナス幅が、11月は-1.6までぐっと縮んでいます。だから、季調済み前月比を出すと4〜5%伸びています。ですから10〜12月をくくっても、ちょっとよかったかもしれない。それから自動車は、御承知のような理由で軽が結構よく売れて、11月は、20か月ぶりにプラス2.7とプラスになったのですね。でも、また12にはどんと落ちていますが。ちょっと線香花火的な動きが確かにあったのです。

それから図表3を見ていただきますと、これは明らかに在庫減らしの生産調整のテンポが変わってきていますね。上がったり下がったりしながら、出荷も生産も横ばいぎみになっている。在庫率の上昇は止まった。若干、下がってきている。したがって、急激な失業率の上昇というのは、その時期を過ぎたかもしれない。もっとも、これは遅行指標ですから、この辺はまだまだ安心できませんが、これも一応の根拠になっています。

ただ、実はこの通産省の生産指数は、御承知のようにX11で季節調整をしています。ところがX11は曜日構成の調整が入ってない。だから、X12のARIMAで調整しますと、この形は大分変わってきまして、98年の前半がこれほど急激に下がらないかわりに、この横ばいぎみに見えているのはまだ下がっているのです。だから、下落テンポは確かに鈍化してきたがまだ下がっているのであって、堺屋さんが言うように、底を入れたなんて動きではない。まだ下がっています。下がり方が鈍化したという程度です。

それにしても、10〜12月のGDPが5四半期ぶりのプラスになった可能性はあると思います。消費が久しぶりにプラスになった。それから住宅投資がプラスになることによって、久しぶりにプラスになったかもしれないと思います。

しかし、私は、この1〜3月がまたマイナスだろうなと思いますので、堺屋さんのあの発言は、1〜3月の数字が出る6月ごろに、ちょっと恥をかく可能性がありますね。底入れしたそうだが、またマイナス成長だぞと、こういう話になるだろうと思います。

 

 

 

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