なぜ効かなかったか。一番上の設備投資の落差のほうが大きいからなんですね。御承知のように、設備投資は公共投資の倍の規模を持っていますから、設備投資が10%ぐらい落っこちてしまえば、公共投資を16%増やしたって相殺されてマイナスになってしまう。だから、このとき効かなかったのですが、同じことが、今、起きていると思います。公共投資が増えてきているが、設備投資の下落のテンポが相当なものであります。
図表2の一番右に機械受注があるのですが、去年の4〜6月と7〜9月は、前年比20%のスピードで機械受注が落ちているんですね。これ、半年から9か月の先行指標だと考えると、もっかこのぐらいのスピードで落ちているのかもしれないです。そうしたら、公共投資をちょっとやそっと増やしたって、これは全然効かない。
2番目の心配は、去年、4兆円減税したのに効果がどこかへ行ってしまったということからわかるように、今、所得がそのくらい減っていますから、所得減税をやってみても効果が出てこない。俗に、貯蓄に回ってしまうからだと言う人がいますが、そんなことはないわけで、統計を調べてみれば、貯蓄に回っているんじゃない。そんなに貯蓄性向は上がってはいない。そうでなくて、所得そのものが、失業増、賃金減で減っているんですね。同じことは、法人所得についても言えるわけで、赤字企業にいくら法人減税をしても効かない。あるいは、黒字でも黒字額がぐんぐん減っているときに、減税してやったからといって投資が出てくるものでもない。そういう意味で、サプライ・サイドに対して中期的には大きな効果を持つであろう減税をしているのですが、短期的には、そんなに効かないかもしれないという状態です。
そこに持ってきて、さらに長期金利が上昇し始めた。長期金利が上昇したために、円高も進んだ。これを見て、先行き感が悪化して株価も下がった。金利上昇、円高、株価の下落、この3つが、全部政策効果を相殺するような不況要因になってくるのではないか。また円高はもちろん、日本の純輸出、この図表1でわかるように純輸出が一人で奮闘して支えているわけですが、これも、これ以上伸びられないだろうなという問題が出てきております。
そういうわけで、自自連立で手は打ったのですが、それぞれ問題点も山のようにあるというわけです。