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それから、将来的にぜひ取り組みたいのは、京浜臨海部という川崎、鶴見などの市民がまったくアクセスできない不毛の土地に、ハゼ釣り場を復元したいという話です。これはかなり壮大な、まだ夢物語の域を出ないのですが、ハゼは21世紀のウォーターフロントの代表だと、私は言っています。

というもの、先ほどお話しした劇的なハゼの1年の暮らしぶり、これを完結するためには、浅い泥干潟から産卵所になる水深10メートルぐらいまでの浅い海がごそっと残っていることが必要です。それから、いま残されているハゼ釣り場というのは、大きな川の河口部などですが、ここにも鶴見川と多摩川という大きな川があり、十分できる素材はあるわけです。

ここがいま再編整備計画でこれから先変わろうとしています。レジュメにも書いておりますが、ここにいっぱいある工場が産業構造の空洞化によって海外移転とかをして、どんどん歯抜け状に遊休地が生まれている。このままでは地域としての地盤沈下、経済的な衰退は食い止められないということで、新たな再編計画を県が主導で横浜市、川崎市等を動かしています。現時点ではまず陸上のものをどうするかということに終始してしまって、現在ではもう市民が海辺に出ようとしても出られない。

東京の臨海副都心は親水空間というか、市民が海辺に出られる空間がきちんとつくられているのが素晴らしいと思います。しかし、人が海辺に出ることすらできない。そういうところにまずパブリックアクセス、市民が出る手段を考える。そして、出たところが不毛の地で生き物がいなかったら何も面白くない。

そんなところにハゼとか、ハゼが餌にする小さな生き物たちがにぎわい、暮らせるようなビオトープ、生物の生息空間をつくり出したい。そういったことを現在、多摩川と平潟湾周辺をフィールドに研究していますが、そういった現在ハゼが住んでいるところから学んで答えを出すということをやっています。

そして最後、そうしたハードの構造物をつくった後の、維持管理が人工海浜の例を見ても大変です。そして、公の役所などが、いつまでも維持管理にお金を出し続けることはこれから先たぶんあり得ない。そういった中で、市民がいかに愛着してそこを守っていくか。

 

 

 

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