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そんなハゼもいるかと思うと、これはダボハゼの代表核のシマハゼというのですが、自分で巣をつくるのを放棄してちゃっかりと人間の捨てた缶の中に巣を構えてしまうというのも増えています。このハゼは自分の体ギリギリの入り口があれば、巣の防衛ができる。この缶の中にはおそらく卵が産みつけられていると思います。こんなふうに人間とうまく折り合いをつけて共存している。
われわれは山下公園でゴミ拾いなどをやっているのですが、こういう缶がどんどん拾い上げられて、陸に上げられる。そうすると、缶の中からいろいろな魚やカニがあわてふためいて出てきます。そんなものを救助してまた海に戻すのも重要な作業の一つです。
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ハゼのほかにもいろいろな魚が東京湾で一生を過ごしています。例えばこれはメバルという魚ですが、本来はこれまた岩礁にいる魚です。しかし、東京湾の奥のほう、港の岸壁や桟橋といった人工の構造物、複雑なかたちをしたようなものがあるところには、このようにいっぱい群れて暮らしています。
それから、最近ルアー釣りというのがあります。人工的な小魚のかたちをしたもので釣る、そんな釣り方で人気のあるスズキです。このスズキなども桟橋などに非常にいっぱいついていて、東京湾の中で非常に増えています。スズキの場合、産卵は東京湾でも湾口近く、観音崎から久里浜あたりの海域で産卵します。
生まれた稚魚は湾の奥に戻ってきて、多摩川や江戸川などの河口、三番瀬もそうですが、そういったところが稚魚たちの揺りかごとなり、あとは一生東京湾の中で大きくなって暮らし、ほぼ一生を東京湾の中で過ごしている魚です。
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ところが、東京湾の外から入ってきて、成長期だけ東京湾で過ごす魚も多いです。例えばウナギやアナゴのような長い魚の類です。ウナギはいまだに産卵場がわからないというので、水産上の海のミステリーの一つなのですが、どこか遠い南のほうの海で生まれて、親とは似ても似つかない柳の葉っぱ、レプトセファルスという名前の幼生でやって来ます。
アナゴは、そのあとこのようなかたちに変化して、産卵期が来るまで海底で過ごしています。
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東京湾の浅い海には、春にシラスのような白い透明感のある魚が出てくることがありますが、それはアユの子供です。アユというのは川の清流の魚の代名詞のように思われますが、生まれてしばらくの間は海で暮らします。海と川のつながりがないと生きていけない魚です。ですから長良川の河口堰などでも問題になっていました。アユが死ぬのではないか。