こんなフジツボやホヤがくっついている岸壁の側というのは、非常に水の透明度があります。先ほどお見せしたような赤潮が起きると、手を伸ばすと自分の指先がかすんで見えなくなる。そんな濁った水のときが多いのですが、そんなときでもこういう生き物がいっぱいついた岸壁の側にくっつくと、岸壁から10センチぐらいの間は水がスコーンと抜けて遠くまで見える。そういうところでは、生き物が赤潮を食べてくれるんですね。そういうふうに目で見ても、海に潜ると、こいつは水をきれいにしてくれているのだなというのがわかります。
アサリなどもそうですね。アサリも管を出しています。あの管で水を吸い込んで、水を濾過している。そんなものがヒトデとかもっと大きな生き物に食われ、人間も取って食べる。そういう生き物の食う、食われるのつながりの中で、彼らは環境も浄化してくれているというわけです。
<スライド>
もう一つ忘れてはならないのは、海底の泥を直接きれいにしてくれている生き物たちも結構いることです。それは、釣りの餌になるゴカイの仲間です。また、ゴカイたちは泥の中に潜り込んで暮らしているので、目に触れる機会はないですが、ナマコなどは海底の上を這いながら泥を食べています。泥の中の汚れ分、栄養分になる有機物などだけを食べる。
そして、このウインナーのようなものはナマコの糞ですが、消化できない鉱物質の砂粒などは糞として排泄する。ですから、糞だというと、子供たちは汚いと嫌がるのですが、周りの泥よりきれいになっています。畑の土なども、ミミズがいるとよくなると言います。同じように海底にいる生き物は生きながらにして、海底の土もよくしてくれているわけです。
さて、これからはレジュメの2番、生き物たちの暮らしぶりというところに入っていきます。これから冬に入ります。そうすると寒くて、私などもなかなか海に入るのがつらいのですが、この時期の楽しみがあります。それはこんなきれいな宝石のようなものが、横浜港の“氷川丸”の船体などに産みつけられる。ひょっとしたらここの船にも魚が産卵しているかもしれません。
これは何の卵かと申しますと、アイナメという魚の卵です。アイナメは、釣りをやる人ならよくご存じの岩場の魚ですが、面白い習性があって、オスが卵を孵化するまで守るんです。強いオスは縄張りをもって、複数のメスとつがって子を生ませます。