ですから青潮は酸素がない毒の水、赤潮はプランクトンが大発生して色がついた水ということで、字面だけでは色が違うだけのように思われますが、本質的には全く違うものです。
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そういう酸素のない水に半年間覆われる海域というのは、東京湾の奥のほうに集中しています。皆さんがおられる東京湾のお台場周辺のすぐ目の前の沖は、夏の間には生き物が全くいない。ゼロです。
これは水産庁が調査した、東京湾全域の海底にいる動物の種類数をこのような等高線のようなもので表したものです。だいたい多摩川と姉ヶ崎を結んだ線より奥は生き物がいない死の世界です。一方、湾の南のほうに行けば太平洋から新鮮な水なども入ってきますので、生き物は多い。特に多いのはこの部分です。横浜の本牧沖あたり、60種類を超える非常に濃密に生き物が分布しているところがある。そして、千葉県側の富津あたりにも60種類を超えるところがあります。
ここは浅い海があるだろうとわかりますが、ここはどんなところかといいますと、つい3年ぐらい前に話題になった中ノ瀬という場所です。不思議ですね。東京湾は湾の奥から湾口に向かって徐々に深くなっていくのですが、突然ここだけ浅場ができています。20メートルより浅い、こんもりとしたお山のようなものが東京湾の出口近くにあるんです。浅い海がありますから、生き物はいっぱいいるし、水の循環もいいところです。
しかし、東京湾は船の出入りが非常に多いのですが、浅場は航路の障害になる。船が座礁する恐れがあります。実際、"ダイヤモンドグレース"というタンカーが97年に底を擦って原油を流出させました。あんな事故も起きていて、ここを削らなければならないという話が長年あります。
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これは、ある日の東京湾を通る船の航跡をずっと描いていったものです。これを見ると、見事に船がどこを通っているかわかる。一面どこでも船が通れそうな東京湾ですが、集中して通っている場所があります。そこは航路に指定されているわけですが、その航路が二股に分かれて空いた部分がある。ここが中ノ瀬です。
それでは、ここまでお話したことをスライドで振り返ってみます。