残念ながら、日本ではまだまだそんなめざましい成果が上がっているわけではありませんが、いくつかの前進がありました。それを最後にご紹介します。
ずっとこの活動に参加してくれている仲間の中に、広島で活動している方たちがいらっしゃいます。広島のある海岸でずっとゴミを調べていました。そして、自分たちの海岸のデータと全国の平均を比べてみたら、100項目のゴミの中で自分たちの海岸には発泡スチロールの破片が非常に多いということに気がついたんです。その広島の海岸のゴミの中で、何と65%が発泡スチロールの破片でした。
これはどこから来ているのだろう。初めは、ファーストフードの容器だとか、漁港で使っているトロ箱が砕けたものかと思ったそうです。それで周辺のフィールドワークを重ねるうちに、それが広島名産のカキ、オイスターの養殖のいかだから出ていることを突き止めました。
瀬戸内海に何万基という養殖いかだが浮かんでいて、そのいかだを浮かべるための浮きとして、これぐらいのすごく大きな発泡スチロールがむき出しで使われていたんです。それはフロートとして製品化されたものではなく、安くて軽くて浮きにちょうどいいということで使われていました。海面に浮かんでいますから、当然波でこすれて、発泡スチロールの表面がはがれてきます。それが浮かびますので、波に運ばれてそこの海岸を汚していた。
そこまで突き止めた上で、この広島の方たちは、県の水産課と漁協にお話をしに行きました。数字を持って「私たちが調べたらこうこうこうでした。そこで、提案します。この浮きを砕けない材質のものに変えてください。そうすればここの海岸から、広島県の名産をつくっているところから出ているゴミはなくなるんですよ」という提案を何度も何度もしたんです。
そうしたら、5年かかりましたけれども、モルテンというバレーボールのボールをつくっている大きな企業が耳を傾けてくれて、バレーボールをつくる技術を応用し、砕けない材質のフロートが製品化されました。もちろん強制的に変えていただくわけにはいきません。
非常にお金がかかることですから。でも、何年か経って傷んだフロートを買い替えるときなどに、発泡スチロールではなく砕けない、海を汚さないフロートにしましょうということを、いま県の水産課と漁連が指導してくださっています。