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これはそのとき調べた12区画の中で1番個数が多かった場所のゴミです。10メートル×10メートルの中に落ちていたプラスチックのゴミを全部ボランティアが数えたのですが、いくつあったと思いますか。タバコのフィルターとか細かいものもあるのですが、たった10メートル四方の中に3万2258個ありました。それは広い海岸のほんの一部です。海岸全体でそれを考えると恐ろしい数になると、皆で気持ち悪くなりながらゴミを数えました。

よく見ていただくと、圧倒的に多いのはプラスチックの破片です。プラスチックの飲料のボトルとか花火の火薬が入っているところ、昔の花火は全部火薬と紙と木だけでしたが、いまは火薬の入っている先の部分はほとんどプラスチックです。

ですから水辺で遊んで波に洗われているうちに、木や紙の部分ははがれてしまいますけれども、最後まで筒状の、昔の鉛筆のキャップみたいな、火薬を入れてあるところだけはずっと残り続けてしまう。それから、ストローやお菓子の紙、飴の紙といったものもたくさん落ちています。

ふだんの活動では、すべてのゴミを全部さらうということは無理ですので、できるだけのゴミを拾ったり、数えたりということをしていますが、日本は四方を海に囲まれていますから、日本全体、世界全体の海岸で考えると、腐らないゴミがどれぐらい海を汚しているか、その現実がどれほど恐ろしいかということは想像していただけるのではないかと思います。

比較的目に見えてわかりやすい、海を汚したり、動物に被害を与えているゴミの問題だけではなく、科学者の中には、こうやって一度捨てられてだれも拾わないと、何年も何年もそこに残り続けてしまうプラスチックのゴミが、将来にわたってどういうふうに環境を汚染していくかということを調べて、いろいろな警告を発している先生がいます。

ふだんいろいろお世話になっているそういった先生方のお一人で、北海道大学水産学部で海鳥の研究をしていらっしゃる小城先生という方がいらっしゃいます。小城先生はもともと鳥の生態を研究しているのですが、あるとき死んで打ち上げられた鳥のおなかを、どんなものを食べているかを調べるために解剖しました。そうすると、プラスチックがたくさん出てくることに気がついて、鳥を調べたいのに、いつの間にかゴミを調べることになってしまったという先生です。北大にいらっしゃいますので、北海道周辺の海域の綿密なゴミの調査をなさっています。

2年ぐらい前に、北海道の南東部の海岸でプランクトンを調査するようなネットを使って、87カ所で海上のゴミを調べました。そのときに、87カ所それぞれで調べた、これよりももっと細かい、微粒子化したプラスチックがどれぐらいあるかということを全量調査されましたが、平均して1平方キロあたり49万個のプラスチックの粒子があったそうです。

 

 

 

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