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さっきの漁網と同じように、釣り糸というのも昔は天然の繊維でした。でも、いまの釣り糸は丈夫で切れにくく、値段も手頃な、いわゆる化学繊維のものが一般的です。メーカーは野鳥の被害などを考慮して、自然分解する素材の釣り糸ももう製品化されていますし、実際に市販されているのですが、まだまだ値段が高い。

また強度の点でいままでのものと比べると、釣りに適さないほど弱いわけではないけれど、高い上に自然分解させるためにいままでのものより若干強度が弱い。そういったことから、どうもそういったものを積極的に使う釣り人がまだまだ少ないようで、ときには餌がついたまま水辺に放置されているような釣り糸、ゴカイか何かがくっついたまま落ちていると、海鳥はそういうものを飲み込んでしまいます。

私も実際に見たことがありますが、くちばしのところから釣り針の先が飛び出して、糸が垂れ下がり、取ることができなくてそれを引っ掛けたまま生きている海鳥とか、生きていられればまだいいですが、そのために命を落とすような野鳥がたくさんいます。

野鳥の保護に取り組んでいる鳥類保護連盟とか日本野鳥の会などでは、定期的なフィールドの調査を行ったり、釣り糸を回収するようなキャンペーンを行っていますが、なかなか釣り人のマナー向上に一気につながるというところには至っていないようです。

でもうれしいニュースがありまして、心ある釣り人が、釣り人の立場から水辺の環境を守ろうということで立ち上がって、環境保護に関心を持って行動する釣り人の団体などもできたりしています。私たちはゴミを拾うだけではなく、いろいろな立場の人と力を合わせて、それぞれの得意な分野で役割分担をしながら一緒に活動していけたらと思って、ふだんからそういう方とも交流しています。

では、いったん場内の明りを戻していただいて、ほかのゴミの話をします。これは冒頭でお見せした湘南海岸で、ふだんどんなゴミがいくつ落ちているかというのを調べながら拾う活動をしています。ふだんは600〜800人ぐらいのボランティアの方と1時間ぐらいの時間をかけて調べながら拾います。実際いろいろなものがたくさん落ちていて、数百人いてもたった1時間では、拾ったり、調べたりできるゴミの数は限られています。

丹念に徹底的に全部調べたらどうだろうかということで、全部の海岸のゴミをすべて拾うことはできませんので、海岸に10メートル幅にロープを張り、さらにそれを10メートルごとに区切って、10メートル×10メートルのマスを10カ所、波打ち際から順番に区画しました。そのそれぞれの区画の中でどんなものが落ちているかを、ふるいを使って表面の砂ごとゴミをすくい、事務所に持って帰って、洗って、乾かして、すべて数えるということをやったことがあります。

 

 

 

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