日本ではすごく狭い範囲で行政を見ている。ですから、東京湾を管理できずにいます。サンフランシスコ湾はたまたま1州ですから、きちんとまとまって法律もつくられました。セイブ・ザ・ベイという湾を守る法律です。
マカティアという上院議員とペトリスという下院議員が骨を折って、議会を通して法をつくる。そのバックにはシルビアさんたちの住民運動があったのですが、いまではマカティア・ペトリス法と言われています。それが今度は全米に広がり、1972年には沿岸域管理法、コスタルゾーンマネジメントという法律の基になりました。
ワシントンD.C.に面したチェサピーク湾は、東京湾の5倍ぐらいある湾ですが、ここの保全と回復計画運動は1985年から行われています。もう先進諸国では保全ではなく回復計画をやっている。ですから、そういう点では東京湾は遅れに遅れています。それは一般の人たちの関心がない。民主主義国家においては、やはり一般市民の関心が不可欠です。彼らはどういうことをやっているかというと、こういう勉強会を限りなくやっています。子供たち、学校の先生、地域の有力者、それから一般市民が、そういうかたちでことあるごとにやっています。
結論は、川を生き返らせることが湾を生き返らせることです。湾を生き返らせることが、外洋をよくする。いま日本の外洋は磯焼けという現象が起こっています。磯が皆だめになっている。そこにいる生物たち、カニや伊勢エビなどもそうですし、ちょうど東京湾の入り口の館山湾にはサンゴ礁もあります。
そういう中で、東京湾全体としては外洋部分はまだまだ生きていますが、内湾域に入りますと開発するだけしてしまった。でもかろうじて三番瀬を残しました。これは現代人の知恵というか、知恵の使いどころですが、すごくいいことだと思います。
東京の海もありますし、千葉県の海もあります。東京湾は神奈川県、東京、千葉県と分かれています。川は建設省、港湾は運輸省、ゴミは厚生省、魚は農林水産省、石油基地などは通産省といろいろ分かれています。皆それぞれの価値観が違います。ですからまとまりがつかない。