でも、湾はかけがえのない天然資源だという位置付けをしたときに、皆で一つのテーブルに着けます。ではそれをどのようにしていったらいいか。こういう必要があるのだけれどどうしたらいいか。そこでアメリカが出した知恵は、必要最小限の埋め立てをしていくということです。埋め立てをした場合、そこに生物がいなくなる危険があると、いままで埋め立てしたけれど不必要なところはまた海に戻す。そういうことをやっているのです。
先ほどのビデオにヘイワード海岸が出ました。塩田にして塩を採っていたのですが、それが廃業した。その広大な土地をもっと陸地化して工業用地にしようとしたときに、それはまずい、自然に戻すということをやったのです。
もうたくさんの埋め立てをしてきている。なぜかというと、アメリカはわが国よりすべて早かったんです。ヨーロッパも第2次世界大戦で焼け野原になってしまいました。わが国もすべて焼け野原です。そして加工業、流通、商業、全部の人間活動が一時ストップしました。アメリカは健在だった。ですから、アメリカの産業は世界に物資を供給するためにフル回転しました。そして、アメリカが世界をドルで覆う。それが1960年代にピークを迎えました。
そのときに、彼らはサンフランシスコ湾でいち早く反省しました。車を使うシステムが正しいのだろうか。なぜそういう発想をしたかというと、この時酸性雨が問題でした。大切な木が枯れてしまう、いま皆さんがサンフランシスコやロサンゼルスに行くと、水が足りなくなって庭木が枯れたり芝生が枯れると、それは彼らが人工的につくった緑ですから、今年は別だったようですが、足りない水でもとにかく水をまくことを奨励しています。
これだけ大切にしている緑を、排気ガスが酸性雨をつくり、だめにしてしまうというわけです。彼らの先祖はヨーロッパ大陸から来ました。ジョン・F・ケネディの先祖もそうです。彼はまだ若いほうですが、ボストンあたりでは当然ピューリタンの子孫もいるでしょう。彼らは3本マスト、4本マストで大西洋を命がけで渡ってきた人たちです。ですから、お金がたまって金持ちになったら海岸に住んで、ヨットを持ってというのが、彼らのステータスなんです。常に海にあこがれがあります。そういう人たちですから、海に対する理解がすごく早い。
そこで、埋め立てをするとまず景観を損なう。なぜかというと、彼らのレクリエーションはいつもヨットです。ヨットに乗り、ヨットで食事をする。たいしてぜいたくなヨットではありません。小さいものは6メートル、5メートル、ないしせいぜい7、8メートル、大きいものは12メートル程度あります。