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もう一つは、溶存酸素がないと海の中の生物は生きないんです。その酸素を植物性のプランクトンたちがどんどん出します。海藻類やアオサも出す。そういう植物がまず酸素を吐き出します。

ちょうど下水道を処理するときに曝気作業というのをやります。水をかき混ぜる。それは空気から酸素を取り入れているのです。それによってバクテリア類を繁殖させて、その食循環によって浄化しようという考え方です。その中で取り切れないのがリン、チッ素なのですが、三番瀬という広い海域。海面というのは溶存酸素の量は表面積に正比例します。

だから浅くて広い面積を有していたほうがいいわけです。波しぶきがあって、その飛沫の周りを空気が覆います。これが曝気作用です。なだらかな重力波が浅瀬へ来るとずっと高くなって、最後には波がザーッと砕ける。そういうことをやるのが浅瀬で、そこで酸素の供給もするから生物が豊かです。

もう一つは、川から淡水が流れてきます。いまはものすごく少なくなっていますが、山から肥沃な水、ミネラルを含んだ肥沃な水が流れてきていた。それと沖合からは海水が流れ込んでいた。海水の生物と淡水の生物がぶつかり合うところですから、両方の生物が生存しています。

いまはやはり少なくなったのですが、干潟のとなりには塩水湿地があって、淡水湿地があった。川もそうですが、川の主流だけではなく、周りに湿地帯があったんです。そこに植物がたくさん生い茂っていた。それらが全部、酸素の供給をするし、生物の隠れ家でもあるし、小動物の酸素の供給源や餌場でもありました。アサリのように食色循環の中で全部自然の浄化作用を行っていたのです。

サンフランシスコ湾が埋まっていくと、そういう機能がなくなってしまう。カリフォルニア州のサンフランシスコ湾では、1962年にそういう運動が起こりました。昭和37年です。さっき「ベイ・オア・リバー?」とあったでしょう。

この本は阿川弘之さんには少し気の毒なんです。いま彼は文学界の第一人者ですが。この本はちょうど昭和37年に中央公論社から出版された『世界の旅』という本です。そのころ円はまだ1ドル360円ですから、多くの人は世界旅行ができませんでした。私も夢を膨らませながらこういう本を読んで、ヨーロッパやアフリカ、アメリカなどに夢をはせていました。

その10巻目に「日本の発見」というのがあります。ディスカバージャパンです。これは全部日本のことが書かれていますが、最後の解説の中に阿川弘之さんが「空から見た日本」ということで書かれていた。阿川弘之、作家、1920年広島市に生まれ、東京大学国文科卒、1962年6月に東京の上空を調布からセスナ機で飛んで、わが国を見ていた。そのことをここに書いています。

 

 

 

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