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ちょうどその年にレイチェル・カールソンという人が『沈黙の春』という本を書いています。これも記憶に留めてください。アメリカの環境問題というのはそこから始まります。レイチェル・カールソンの『沈黙の春』という本は、いま新潮社から翻訳本が出ていますから、それをお読みになるといい。本当に面白い本ですから、読んでいただきたいと思います。

そのレイチェル・カールソンも女性です。また、この反対運動を行ったシルビアさんという方は、カリフォルニア大学の学長の奥さんです。彼女たちは、最初は景観を損なうという発想だったのですが、バックに大学がありますからいろいろ理論立てをします。

このまま埋め立てていくと、子々孫々に食糧難が起きる。海というのは、かけがえのない天然資源である。特に閉鎖性の海域というのは稚魚が育つんです。それはなぜかというと、さっき三番瀬にアサリがいましたね。アサリは、けい藻類など植物性のプランクトンを吸い込み、それを食べて、澄んだ水を吐き出します。

その植物性プランクトンを、動物性のプランクトンが食べます。動物性のプランクトンは何かというと、アサリの稚貝やカニ・エビの稚魚が多く、カニやエビの甲殻類や魚は、人間は一人しか生みませんが、それらは無数の卵を生みます。それは歩留まりが悪い。アサリを例にとりますと、最初は浮遊卵で浮いています。育ってくると質量が増えますから、それが沈降して定着します。

ちょうどいい深さでいい底質のところで止まれば、そこが生活の場になるのですが、なかなかそうはいきません。うんと浮いているうちに魚の餌になるんです。これが動物性プランクトンです。カニもエビ、アサリもそうです。弱肉強食の世界ですから、強いものが皆食べる。歩留まりが悪いからたくさん生むんです。

では、その動物性のプランクトンは何を食べるかというと、植物性のプランクトンを食べる。植物性のプランクトンは何で育つかというと、リンやチッ素を取って、光合成をして体の中にアミノ酸をつくります。それを魚たちが食べる。またアサリも食べる。

アサリはそこでたんぱく質をつくっていくわけです。それを今度は魚も食べるし、人間も食べる。魚も排泄するし、アサリも排泄します。人間も排泄します。そうすると、またリンやチッ素が増えます。アサリの場合は地中に排泄します。そうするとベントス、魚を釣るときのゴカイなど地中に住んでいるものが、それを餌にして食べる。そういう食循環があります。

 

 

 

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