しかしインドがマイトリという基地を作ると、パキスタンもやろうとしたり、中国がやると韓国が出て来たり、南極半島付近に基地が集中しているのはだいたい領有権を主張したり、対抗意識からそれらの国々がお互いに牽制し合って基地を持っている。そういう側面は確かにあります。ただそれにもかかわらずというか、地球全体のことを知るためには人間活動から非常に遠く離れた南極というのは、その活動の影響が非常に敏感なかたちで現れるということが40年の観測の中でいろいろわかってきて、大事な場所だという理解が進んだ側面もあります。
日本も去年環境保護議定書を批准して、南極で観測活動をやる国々はすべてがある一定の環境に対する配慮とモニタリングを義務づけられて活動を続けるというそういう規約のもとでやっていくことになります。
先ほどハイテクだと言いましたが、二酸化炭素やメタン濃度測定とか氷床ボーリングとか環境変動をつかまえる観測という意味では日本、ドイツ、アメリカ、フランスなどが先端をいっていますが、お互いに牽制しつつかもしれませんが、これからも科学的目的がないと何のために南極観測をやっているのだというのが必ずお互いに問われる時代になっています。ですからそういう成果の出るかたちの観測を各国が続けていく。また続けていかなければいけない。そうでないとやはり続かない。そういう時代になってきていることは確かです。
司会 どうもありがとうございました。ほかにございませんか。では最後にどうぞ。
質問 先ほどニュートンリングの模様を使って氷河の移動の様子を調べるというお話がありました。大変おもしろいお話だと思うのですが、ニュートンリングの模様の状況の中を解析して、たとえばさっき飛行機が海の中に埋没しそうになっている絵がありましたが、ああいうニュートンリングの模様から氷の上の集中応力のあるところ、割れそうなところを事前に調べて危ないところを見つけるというような技術を考えることはできないものでしょうか。大変素人の質問で申し訳ありません。
渋谷 ニュートンリングというのは実は物事を単純化して比喩的に言ってしまったことなのですが、人工衛星の積んでいるレーダーは、20メートルとか長さに限りがありますのでそれを使って、800キロとか 900キロという上空から地上を見ても焦点がぼやけてしまいます。合成開口レーダーというのは軌道上を衛星が動いていくと見かけ上、アンテナ位置が変わっていくので、それら多数のアンテナを一緒につなげて、非常に大きなレーダーとして使うことができるという技術を用いたものです。