写真で地上を見る、いわゆるスパイ衛星などは高度の低いところを飛んでいて、それだと大気抵抗ですぐに落ちてしまう。合成開口レーダーを積んでいる衛星は軌道の高さの具体的な数値は忘れましたが、それよりはもっと高いところを飛んでおり、安定して5年とか10年ぐらい働いているものです。そして、100キロかける100キロぐらいの範囲を10メートルくらいのピクセルという画素の単位に分割して、地上情報を記録する。
衛星はぐるぐる回って何十日かにいっぺんまた同じところに戻ってくるのですが、そのときに再度情報を取得し、レーダー波の位相や強度の変化を調べるとさっき言ったようなことができるというものです。動きがものすごく速すぎたりすると、ニュートンリングというのは干渉ですが、その干渉条件を満たさなくなって変動が出せなくなります。南極でこういう変動がそれなりにとらえられるようになってきたのはここ5〜6年です。
ただ最終的な絵で見ると、100キロかける100キロの中の10キロ四方が平均的にどのように変形しているか調べることには向いているのですが、氷の中の割れ目のようにスケールが短く、もっと小さいところまでわからなければならない場合には困るわけです。大きな断層とか氷河など、言ってみれば大きな変化をしているところでは衛星でも間に合います。しかし氷の中の割れ目などというときには飛行機に積んだアイスレーダーでもって、応力集中しているところではレーダー波の反射条件や散乱条件がたぶん変わるでしょうから、それがどのように変わるかをレーダーで捕まえたい、そういう研究をいろいろな国が安全にかかわることですので、確かにやっています。
大局的には飛行機をバンバン飛ばしてそういう観測ができれば良いのでしょうが、それもなかなか難しいので無人ということで衛星から観測することになる。そうすると100メートルの範囲の中の1メートルの傷を調べるということになって、なかなかやりづらいところです。しかし、この5、6年の間にたぶんいろいろ進んでくるでしょうし、しなければいけない分野だと確かに思っています。
司会 ということで南極のこと、氷のことを少しは理解していただけたかと思います。渋谷隊長、今日はどうもありがとうございました。どうぞ拍手でお送りしていただきたいと思います。(拍手)皆さん、どうもありがとうございました。
なお船の科学館では、今度は9月に千葉県にあります三番瀬の問題を取り上げまして干潟についての講演を予定しておりますので、こちらのほうもぜひ応募していただきたいと思います。皆様、本日はどうもありがとうございました。(拍手)