2番目の棚氷と氷床ですが、氷床すなわちアイスシートというのはその下に岩盤がある、棚氷というのはその下は単純化した言い方をすれば海である。そういう違いです。
ロス棚氷は非常に大きい棚氷です。それからウエッデル棚氷とか。この写真だと棚氷というかたちではちゃんと見えませんが、80°S、40°W付近にフィルヒナー棚氷があります。陸と海の境目をグラウンディングラインと言い、どこなのかは見ただけではわからないのですが、先ほどの合成開口レーダーなどで調べるとそういうのも検出できるようになってきています。スライドにはランバート氷河と書いてありますが、その下流にはアメリー棚氷という氷の溜り場があります。
気象変化ですが、申し訳ありませんが昭和基地の観測データは1959年ごろからずっとあるわけですが、経年変化の具体的な数字を私自身は知りません。一緒に越冬した気象庁の人間も経年変化について何も言っていませんでしたし、たぶん先ほどの氷と同じようにまだはっきりわからないのではないでしょうか。私自身が知らないだけかもしれませんが、あってもあまり顕著な値ではないのではないかと思います。
氷床が解け出すのは気温が上昇したからなのは、それは長い時間で見れば絶対そうだと思います。いま現在何故、見かけ上大きな気温上昇がないのに解け出すのかについては海水温が上昇している効果かもしれません。あるいは、1万年前に急激に平均気温が10度近く上がっているわけです。ということはきょう具体的な話はしませんでしたが、氷は熱伝導率を持っているわけですから当然、ある時定数でもって1万年前に温度上昇した分が深部に浸み渡っていきます。
そしてだいたいちょうど1万年ぐらいで、地表の気温変化が3000メートル深度に浸み渡ると言われています。だからいま現在見ている姿が、実はいまの変化をそのまま見ているのか、1万年前の変化がいま現在になって現れているのを見ているのか。いろいろ複雑に絡みあっていて、何とも一概に言えないというのが素過程が非常に複雑に絡み合った変動シミュレーションの図なのです。漠然とした言い方でこうだと言い切れなくて申し訳ないのですが。
司会 ほかには何かございますか。
質問 戦後の一時期、南極に世界各国が競って基地を出したという時期があって、南極というのは非常に国家的な思惑と言いますか、天然資源を探査したり、早く基地をつくり実績をつくって将来の南極の領有権に結びつけようとか、そういう非常にどろどろした国家的な思惑の渦巻いているところだということを聞いたことがあります。