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司会 それではほかにどうぞ。

質問 川崎からまいりましたシミズと申します。素人の質問で恐縮ですが、レジュメの真ん中から下のほうに「1ミリから10ミリの地球変動」と書いてあるのですが、これをもう少しわかりやすくお話しいただきたい。

それから第2問は、レジュメには「氷床」という書き方をしていますが、これはよく新聞で「棚氷」というのが出てきます。あれとどう違うのか。それから第3問は南極における気候変動で、たとえば気温はどのぐらい変わってきているのか、そのへんをちょっとお話しいただきたい。三つです。

渋谷 まず第1問の1ミリから10ミリの話ですが、ある場所、ある瞬間をとらえれば当然もっとそれ以上変化しています。たとえば地面の動きはわれわれがいまここにいるこの場所においても月、太陽の位置関係が変われば10センチから15センチぐらい高さ変化するわけです。一方、地震が起きると断層で1メートルぐらい食い違いができるとか、そういう非常に短い時間での急激な変化も当然かぶさって1ミリの変動は隠れてしまいます。

しかし、地球規模での平均的な変動は観測すればするほど、実は理論予測と合うということになってきているのですが、そのようにわかっている成分を取り除いて原因がわからないけれどもともかく動いている、あるいは変化している大きさが1〜10ミリある現象なら検出できるのです。

たとえば昭和基地付近のところは先ほど申しましたように、3万年前には氷はなくなっていた。でも大陸沿岸露岩のほうは1万年ぐらい前にようやく氷がなくなったらしい。ポスト・グレーシャル・リバウンドと呼ぶのですが、重石になっていたものがなくなると地殻は浮き上がってきます。そういう隆起の割合ははるか昔に氷がなくなったところと、最近なくなったところでは隆起率が違うから、年間数ミリとか、そういう大きさの傾動が絶えず続くらしいことがわかって来ました。

ですからある程度長い年月をかけて平均的な隆起量の差を追いかけていくと、1回の測定誤差が1センチぐらいあっても、たとえば観測を継続すれば10年間で1センチという傾向は捕まえられるようになった。つまり1ミリ/年ということです。瞬間的に1ミリ精度というのは、それは無理ですが、何か理由があっていままでわかっていなかった変化をシグナルと呼べば、そういうシグナルが1ミリから1センチぐらいだともうつかまえられるようになりました。そういう意味です。

 

 

 

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