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しかし、この釣り合いはとても不安定で、どちらに転ぶかというのが非常に大事なところですが、よく引用されるIPCCモデルというのがありまして、二酸化炭素を出し続ければ確実に気温は上昇し、氷の融解が加速されるだろう。数値自体は先ほど言ったようにモデルが非常に複雑なので、モデルの立て方によっていろいろあるのですが、自然になかったものがどんどん排出されて増えていくとそれが引き金になりバランスを崩すことは間違いないことだと思います。

大気CO2濃度は昭和基地でも非常に精密に測っています。ハイテク基地と言いましたが、そのほかの南極基地ではアムンゼン・スコット極点基地でやっており、精度がいい観測をしているのは2基地しかありません。

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大気CO2濃度はこのように季節変化しますが、それは海にいるプランクトンの光合成や生物生産等が季節変化するからですが、傾向としては年々確実に増えていっていることは間違いない。よく話題に出るオゾンホールですが、ドブソン分光計というので調べると季節変化はあっても傾向としてはオゾンは減り続けていることがわかります。南極で言う春ですが、夏のちょっと手前、10月とか11月にあらわれるオゾンホールは、16〜17年来、例年と同じように8月ぐらいから始まって、4カ月近く続き、しかも拡大していく傾向自身は変わりありません。

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自然というのはどちらに転ぶか予測が非常に難しいものです。この写真は私の南極体験の原点ですが、1980年の越冬で飛行機を2機持って行きました。昭和基地の駐機場は基地のすぐそばの海氷上だったのですが、そこの氷盤は基地開設以来割れたことがなかったのです。

21次の私の初めての越冬ですが、観測隊が基地をつくって以来二十五、六年割れたことがなかったところが本当に1日の間に、朝起きてみたらもう氷盤が割れていた。だから変化が起きるときは本当にあっと言う間で、それが南極なのだと強く実感した次第です。ちなみにこのピタラスという飛行機はソ連のヘリコプターで吊り上げられて回収され、助かりましたが、セスナのほうは残念ながらだめで水没したわけです。

 

 

 

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