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いまの話のマクマード基地ですが、基地から衛星が見えていなければいけませんから、基地を中央として半径2000kmしかカバーできません。オヒギンズ基地は64°S、57°Wあたりにありますが、さらに、昭和基地があって3つの円が重なり合って全南極がカバーできるということになります。
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いまや海で1ミリから10ミリ、氷床で1cmから10cmの変動が測れるというのは、実は、長さと時間はいまほとんど同じ意味を持ち、非常に安定した周波数を持つ短い波長の波がいくつあるかということで長さを測る時間はいま非常に正確に測ることができます。波の数の変化も正確に数えられるので距離の変化が正確に測れる時代になっているわけです。だけど長さ、時間の変化にくらべ重力は変化をつかまえるのが大変です。
これは超伝導重力計といって、液体ヘリウムで超伝導状態をつくってその磁場の中で球を浮かせて、言ってみればリニアモーターカーの原理と同じですが、球を動かないようにすることで働く力をはかる。球にかかる力のうち、月、太陽の引力が圧倒的ですが、海の水が押し寄せてきて、重力を測っている点が地球の中心のほうに見かけ上歪んで沈下していったようなかたちになると、その場の重力が変わり検出できます。そのように非常に精密に重力を測る機械が昭和基地ではいまから6年前から動いています。
このような重力計は北半球には14〜15台ありますが、南半球では昭和基地と、あと日本がオーストラリアのキャンベラに置いたものがもう1台、それから赤道近くですがバンドンというところに置いた、計3台しかありません。そういうことでさっき言った大気変動、海流変動などによる物質の移動による重力の変化を測る。もしかしたら専門の方がいらっしゃるかもしれませんが、マイスナー効果というのが原理で、磁気浮上力で、浮いた球をフィードバックをかけて動かないようにして外力変化を連続的に観測しているわけです。
非常に単純化した話にしてありますが、海面が1センチ上昇すると重力はどうなるかというと、約3マイクロガルの増加になります。地上重力が、だいたい980ガルですから、それの約3.3億分の1の大きさです。超伝導重力計は、重力の絶対的な大きさは測れないのですが、相対的に去年と今年ではどう変化したかというのは1兆分の1の分解能で測ることができる。3.3億分の1と1兆分の1をくらべて考えると、1センチというのはちょっときついかもしれませんが、5センチの海面上昇だったら確実にわかります。
ただこれは理想的に静止状態になるように上昇した場合ですが、月、太陽の関係で絶えず潮汐による変化が含まれるので、それらを差し引いて増えたか減ったかを調べなければいけない。