先ほどしらせ氷河は年間2500メートルぐらい動くという話をしましたが、ヨーロッパ宇宙機構が打ち上げたユーロピアン・リモートセンシング・サテライト、ERSという衛星があり、それの1と2という二つの衛星が1日遅れで2が1を追いかけるようなかたちで飛んでいます。2つの衛星から1日違いの絵を撮ってある種の処理をするとそういう変化がフリンジとして捕まえられる。フリンジの模様がたくさんありますが、動かない場所からこういうフリンジの数を数えていくと1日で数十メートル動いているとかがわかるのです。場所によって流れが遅いところは、フリンジの幅が広いのですが、流れの速いところは非常にごちゃごちゃした密集したフリンジで出てくる。だから実際にその場所に行かなくても、その動きを捕まえられるということになってきているわけです。
これは昭和基地で受信した衛星データを私のところの学生が解析して画像にしたのですが、そういうことを各国が研究を進めて、氷河から氷がどれだけ出て行くかというようなことを調べています。
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合成開口レーダーで地形図をつくることもできます。先ほどのフリンジの中には地形の起伏に起因するものと、氷の流動に起因するものがまざっているのですが、同じ場所で時間を変えて何枚も絵を作っていろいろ処理すると地形も抽出できます。そういうことで短い時間スケールでの氷河の形、氷の動きを調べられるようになってきています。
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これは昭和基地の航空写真ですが、昭和基地というのは世界でもまれに見るハイテク基地になっています。ハイテクは油で支えられていますが、年間500トンの油を使う。太陽光発電装置などを導入して油の使用量を切り詰めようといろいろ努力をしていますが、油に依存しているハイテク基地です。これは私たちが越冬した最後のときの写真ですが、直径11メートルのアンテナがあります。レドームを被っているので暗いのですが、人工衛星が飛んで来るとその電波を捕まえてさっきのような解析のもとになるデータを記録するのです。
南極にはこういうアンテナが三つあります。昭和基地、アメリカのマクマード基地、あとチリの基地ですが運用はドイツがやっているオヒギンズ基地があります。その三つのアンテナでだいたい南極全体をカバーできて氷の変化が調べられるようになります。