スライド結果を出した研究者は、1年間当たり4ミリの上昇が得られたのでやったやったという話になったのですが、実は科学者も間違えるというか、衛星が発信機を積んでパルスを出すということは、発信機はだいたい水晶などの振動子が心臓部で、水晶はエージングと言って周波数が年変化するわけです。だからその年変化の分をきちっと補正しないといけないのです。補正量自体と見積もることはできるのですが、一般のユーザーにデータが渡るときにはそのへんの情報が伝わりにくく、そういう年変化を含んだもので結果を出してしまったわけで、これは実は間違いだとわかっています。
それでも原理自体に間違いはなくて、エージングの補正をしてきちっと測れば海面が上がっているか下がっているかはわかるはずです。ただ水が増えているか減っているか論じるときに、衛星は海面の温度も測ることができるのですが、温度が上がると水は熱膨張しますから、質量が増えなくても海面は上昇する。だから膨らむのを測ったのか、水が増えたのを測ったのかは分離しなければいけない。海面が上がったこと、すなわち水が増えたことと言い切れるわけではありません。
<スライド>
ちょっとわかりづらい図ですが、合成開口レーダーというものがあります。それを使って宇宙から見たところですが、昭和基地付近の内陸です。実はここに白い筋があります。近くの方は見えるかもしれません。これは雪上車のルートで日本隊が内陸のみずほ基地とかドーム拠点に行くときにずっと通っていく道です。道と言っても雪上車で通る道なので幅は10メートルとか20メートルぐらいしかないのですが、南極の道も宇宙から見られる時代になっています。
先ほどのしらせ氷河は1974年、このへんに氷盤が押し出されたところがあるのですが、こういうものの動きはつかめないのだろうか。最近、北朝鮮がミサイルを発射するときに事前につかめるか、つかめないかなどと議論されていますが、物の識別とか位置の変化は実は合成開口レーダーでつかまえることができます。これは1976年10月のしらせ氷河ですが、このときにはこのように押し出された氷盤がありますが、これは実はニュートンリングの原理とある種同じだと思っていただけばいいのですが、フリンジと言って約5センチの動きの変化を1つの縞模様という形で測ることができます。