そういうことで調べてみると、昭和基地付近では、3万4000年とか、4万年前には氷床から解放されたことになる。半減期という話をしましたが、古ければ古いほどどんどん減っていってしまうので分析が難しくなるのですが、技術が進歩すると少量でも調べることができます。
湾の奥、南のほうではだいたい1万年とか8000年とかそれより古い化石は残っていないのだけれども、あるところから北側には残っている。結局、南のほうの氷床がなくなったのは数千年とか8000年とかそれぐらい前の話ですが、昭和基地とか北のほうはもっと古い4万年とかそれぐらい前の時代には既に氷床はなかった、こういうことがわかってきました。
東南極についての従来の説ではだいたい4万年ぐらい前には氷床は現在よりひとまわり大きかったというのが有力でしたが、詳しく調べるといろいろな地域性があってそうでないらしいことがわかってきたのです。
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少し時間をさいて古い年代の話をしましたが、ごく短く1年から10年ぐらいの時間スケールでどうかというと、人工衛星を使って調べられるようになってきています。原理についての細かい話は省きますが、要点はいろいろな技術が進歩し、地上、あるいは海上までの高度変化を1ミリから1センチという精度で宇宙から捕まえることができるようになってきたということであります。
人工衛星を飛ばして、いろいろ調べるとエルニーニョによる海流の変化や、あるいはジェット気流による大気循環の季節的変化などがわかります。周南極海流と言って南極の周りは非常に強い海流があるのですが、それが南極から遠ざかったか、近づいたかというのも実は宇宙から調べられるようになってきています。またそういう大きな気象変動は、地軸は絶えずふらついているのですが、そういう地軸のふらつきと関係があるということが最近と言っても10年以上前になりますが、わかってきています。そういうふらつきを調べて、ある特徴的な変化をすれば地球変動の未来予測につなげられるのではないかという期待もあるわけです。
人工衛星のレーダー高度計からパルスを出して海に当たって跳ね返ってくる時間を測ると距離に換算できます。衛星がどこを飛んでいるかは、いまでは10センチ精度でわかります。そうすると海面までの距離を1センチから2センチの精度で測り、海面地図を作ることができるようになっています。海面地図がどう変化していくかを絶えず測れば、要するに海面が上がっているのか、下がっているのか、それが年変化でどれぐらいだろうかということまで調べられる時代になってきています。