この“より軽い”というのはあくまで比喩的な表現ですが、気温が低いということは緯度とか高さに応じてもより軽い雪が降るということで、長い年月そこに存在する氷を調べれば気温変化としてわかる。
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ということで調べてみると、図の左側のほうがより軽い、右側のほうがより重たいことになります。キャンプセンチュリーというのは北半球のグリーンランドで、バード基地は南極基地で今は無人ですが、この深さで大きく変化していることはわかります。つまり年代に置き換えてみると、1万4000年前から1万年前くらいの間に、地質学的時間のスケールである1万年、10万年という話の中では割合短い数千年の間に気温が急激に変わったらしい。
ちなみにこの℃/ミルという尺度ですが、この目盛がだいたい1度の気温変化に対応するということで、この変化で言うと10度ぐらい変わった。そういうわけでレジュメのほうに1万年から1万2000年ぐらい前に急激に平均気温が10度ぐらい上がったと書きました。
ではこれからどうなっていくかということが問題になるわけです。
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これは、ボストークコアーといって別の場所での解析結果です。あとで場所をお見せしますが、深さは1500メートルと書いてありますが、そういう深さからコアを採ってきた。
先ほどのデルタ018、あるいは重水素も気温データに置き換えることができるようですが、重水素の変化を見るとこうなっている。CO2濃度を見ると、これが最終的に気温に換算した変化で、14度ぐらいの幅があるわけですが、時間スケールが10万年、15万年という中にはこんなに大きな気温変化をしているときもあった。そういうことがわかってきているということになります。
人間の出すCO2は年代で言えば最近に限られるわけですが、地球の長い歴史の中には火山活動がさかんであったときもあれば、沈静化したときもあり、こういう変動に関係して気候変動は起きていた。従って人間活動がもとでCO2濃度が増え続ければ気温が上がることは間違いないようです。
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これはドーム観測拠点という、昭和基地から南へ内陸1000キロぐらいのところのドーム状の場所にある日本基地です。何でドーム状のところでボーリングをするかというと、先ほど氷は絶えず流れていると言いましたが、場所によっては流れにくい場所がある。そこに降った雪はいつもずっとそこにたまっていくということで、気候変化を調べるには都合がいい。バード基地、ボストーク基地、ドーム観測拠点というのは南極のそういう主立った三つドームに位置していて、日本隊も2500メートルのボーリングをして氷のコアを採ったわけです。