しかし平均して見るとそんなに目立つほど変わっていない。1年1年、あるいは季節、季節を見ると異常というふうに見える時もあるけれど、ある長い時間の平均を取ってみると変化していないというのが現状のようです。
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ただそれにもかかわらず長い時間スケールで見れば氷の量が変化したことは間違いない。ここで長いというのは1000年から1万年という意味ですが、どうしてそういうことがわかるかというと、元素の質量比などを使って年代測定ができる。ある特殊な放射性元素は宇宙線などで生まれるのですが、生まれる割合は宇宙線が何億年にもわたっていつでも一定のユニバーサル・コンスタントでふりそそいでいるので、いつも同じですが、ある半減期で崩壊して減っていく。
だから現存する量を調べれば地質学的な時計として使うことができる。どういう元素が使えてどれが使えないかは技術の進歩等で変わるのですが、そういう年代測定技術を使って調べられている。短い時間スケールはまたのちほどお話しします。
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酸素は質量数16だけではなく、質量数18のものも自然界には存在している。スタンダード・ミーン・オーシャン・ウオーター、海の水はどこでどの場所で取ってもその中に含まれている元素の組成はだいたい同一で、酸素も同様です。たとえば氷のコアを採ってくると、20万年とか30万年とかそこにそのまま存在して積もっている場所の連続試料が得られます。深いほうになれば30万年くらいになっているからです。
それで平均海水に対してある深さでの氷の中のこういう組成がどうなっているかを調べると、細かいことは省きますが、気候変化に置き換えることができる。そういうことで調べている。分別といって、水が水蒸気になるとき、気温が低いほど水蒸気側に軽い酸素の16が集まり、海水の側に重い18が集まる。その集まり方がどうも気温とある種の比例関係があってそうなるらしいということで、いろいろ途中の話を省いて結論だけを言うと、気温が低いほどより軽い雪が降る。