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これは私たちの越冬中に受信したB-11の衛星画像で、先ほどの写真とちょっとスケールが違うのですが、リュツォ・ホルム湾という名前の湾のところに引っ掛かったようなかたちになっています。これは1998年の確か3月23日の衛星写真ですが、8ヶ月をかけて氷盤は西に約500km動いている。割れた氷盤が、1周することは普通はありません。途中で引っ掛かったり、あるいは小さく割れて消えていくというかたちになります。
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北の浦というここの氷は普通、多年氷として残り夏の間に割れて流失してしまうということはめったにないのですが、私たちの越冬中の年は氷盤が全部割れて流れてしまった。めったになくても10年規模で変動があることが実感されます。白瀬氷河も氷河が陸から海に浮き出すところはどこにあるのかというのは、実は非常に今日的な問題というか、大きな研究課題です。そういう場所をグラウンディングラインと呼んでいますが、氷床が岩盤から海へ離れて出ていくところが、陸側に移動しているのか、それとも海側に移動しているのかということで、その氷河の安定性が判断できるからです。
しらせ氷河の流出氷は10年ぐらいかけて長い舌のようにたまり、その後急に海水とともに流れ去るということが何回かあるようです。1980年ごろもそういうことがありましたし、1998年にもありました。それより昔は衛星写真がなかったので何十年という変化をつかまえられるほどデータはありません。昭和基地にそういう画像のデータを取れるようになるアンテナができたのが1990年ですので、それ以前の細かいことは実は残念ながらよくわかっていないという状況もあります。
ただ衛星によってはもちろんレコーダーを積んでいて、アメリカとか日本の地上局でデータを下ろしてそれを解析することはできるわけですから、1980年以前にも画像データはあります。今日では雲がかかっていても昭和基地のように5月からだいたい8月の終わりぐらいまで暗夜期の続く場所でも、地上を見て調べることができるようにはなってきています。
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氷盤は氷縁から外に出ていくと言いましたが、それだけではなく、氷が水になって水が気体になるという過程を経ないで、日射が強かったりすると氷からいきなり水蒸気になって出ていくという場所もあります。これは先ほど隕石の話が出ましたが、やまと山脈というところです。