事あるごとにその話を生徒に言って聞かせます。アメリカのルール違反は非常に厳しいのだ、日本ではマナーはお辞儀さえしていればいいが、アメリカではルール違反をすることが最大の無作法であるということをよく心得ておきなさいと生徒に申します。全員の責任と言ったときに私はだれか反発する生徒が出てくるかと思いましたが、女の子も男の子も全然反発はしなくて、全員罪に服従してくれて本当によろしゅうございました。
学校に帰ってから、職員が間髪を入れず父兄を呼んだほうがいいですよと言うので、「けんかをしたと思うものは明日の午前中は眠かろうから明日の午後1時に父兄を伴って学校に来るように」と、夜遅く福岡空港に着きましてから全員に言いました。
そうしたら喧嘩した全員が父兄を伴って来たそうです。そして先生たちがどうしようか、どうしようかと父兄たちを30分ぐらい待たせたのですが、先生が顔を出したときには父兄同士でもう話がついていて、あの子のけがはうちの子がやりましたからうちで治療費を払わせていただきます、この子はこっちがやりましたと、何か父兄同士で話がついていたそうです。それで何も別に小言を言うこともなく、一件落着というかたちでその事件は終わりましたが、本当に一生の中でこんなに困ったことはありませんでした。
それからもう一つは荷物をすっかりなくして船に乗りました。あちこち船旅をしていると知り合いができます。ワシントンのメアリーさんというおばあさんと一緒にギリシャの船旅をしたことがあります。同じルームメートでした。私はいつも一人旅ですのでルームメートOKということで申し込みます。そうすると船会社が適当にルームメートを当てがってくれます。日本人はそういうルームメートはとても嫌いますが、向こうの人はルームメートがいて安くなるのならそちらのほうがいい。それでルームメートは割に見つけやすいので、そうやって乗ります。
そのころのカリブ海クルーズはニューヨークから出ていましたから、そのおばあさんに今度カリブ海クルーズをするのでニューヨークに行くと伝えると、そのおばあさんから「ではワシントンの私の家に寄って二、三日泊まってからニューヨークに行きなさい」と返事が来ました。そこでワシントンに行こうと思ったのですが、ずいぶん昔ですからそのころワシントン直行便がなくてシカゴ経由で、シカゴで乗り換えてワシントンに行くTWAのコースを選びました。