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そしてさらにキャプテンが言うのに「第一、男なら1対1で素手で戦え。1人の男を複数の男がぶん殴るなんて、それも人の見ていないお手洗いの中で殴るなんて、こんな卑怯千万なことはない」と本当に胸のすくような言葉です。「1対1で堂々と戦うのなら、デッキでみんなを呼んで見物させてもいい。私は止めはしない」と言ってきました。

それで私も「その言葉はよく私の父が私のブラザーたちが話していた言葉です。男なら1対1で素手で戦えと私のファーザーと同じ言葉です。私も全く同感です。今回の責任は九十七人が乗っています学生全員の責任です。今日いまからすぐ4階までは出入り自由ですが、それ以上12階までは絶対に出入り禁止にさせます。明日のココケイという島への上陸も禁止させます。そして明後日マイアミで下船しますから、それまでは絶対に生徒を静粛に他のお客様に迷惑をかけさせることはいたしません」と言いました。

するとキャプテンが初めてニコッと笑って「あなたはそういうことを言っているけれど、本当にコントロールできるのか」「やってみせます。絶対にやります」と、生徒もいざとなったらわたしのいうことは聞いてくれるのにちがいないとの自信があって、そう申しましたらキャプテンが私にウインクしました。そして「ではあなたがコントロールできないときは、また私のところに来てください。またジェイルにほうり込んであげます」と言って、えらいごきげんで別れました。

そのときキャプテンにドクターが付き添っていました。ドクターが最後に一言、「あなたはこの処置を学校に帰ったらどうされますか。私どもには関係のないことで申し訳ないのですが、それをお聞かせ願いたい」と言いましたので、「学校の校則では暴力は即退学です」。それだけ答えましたら、ドクターはうなずいて、「それはわかります。ただ彼らは激しやすい生徒たちですから、その点を先生はよくわきまえて今後の決断をされますように」とドクターらしいご意見で約1時間の会見は終わりました。

生徒を映画室に集めていました。私が行くと、ガヤガヤしゃべっていたのがシーンとなりました。事の重大さを心得ているなと思って、このときはしっかりみんなに「マイアミのポリスに突き出すとキャプテンは言っていた。アメリカのポリスはすぐにピストルを抜いて撃つんだからね。怖いからね」と一生懸命おどしておきました。みんなはシーンとなって聞いて、帰りの飛行機に乗ったら、あちこちにばんそうこうを貼ったのが十何人か「理事長、すみません。すみません」とおとなしくなって帰っていきました。いい経験でした。

 

 

 

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