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今の母親は、金さえ払っていれば、なんでもできると思っているようです。そんな母親に育てられているから、子供達に教室でいくら心掛けを言っても馬耳東風、マナーを教えても馬耳東風、そこで一度外国の客船にほうり込んでみた。そしたら調理師学校ですから男の生徒のほうが多いわけですが、やんちゃ坊主たちが萎縮して小さくなってしまった。「あら、みんなどこに行ったの」と言うと「部屋に閉じこもっています」とか言って、女のほうが心臓が強くてどこにでも歩き回っていました。

これはいかんと思って、毎朝一部屋、午前中空いている部屋を借りて特訓の場にしました。マナーを教えるわけです。「昨日、みんなを見ているとみんなデパートの食堂ぐらいしか知らんでしょう。ここは世界でも高級なレストランだからあんなマナーではだめですよ。みんなはレディーファーストは覚えているけれども、オールドファースト、つまり年を取った人がファースト、それから身障者がファーストということもしっかり頭に入れて行動をしてください。」

「たとえば船員が皆さんが席を立つときに「サンキューベリーマッチ」と言っているのに知らん顔をして行く。あんな無作法なことはない。むしろみんなのほうが若いのだから年上の船員に対して「ありがとうございます」という気持ちで「サンキューベリーマッチ」と言って席を立ちなさい」と。中には早速握手をしたり、即実行します。そうすると船員がものすごく喜びます。

「みんなのブレザーは紺のダブルの金ボタンですが、ここの船員さんと同じ制服ではないですか。ネクタイもえんじと紺の斜め縞でネクタイまで同じなのに、みんなの態度は何ですか。本当に見てはおれない。姿勢も悪いし歩き方も悪いし。それに比べて向こうの船員さんはスマートで歩き方もきびきびしている。それをじっくり見習って、そして自分の姿勢を直しなさい」と言うと翌日からだんだんと姿勢がよくなってきます。

飛行機に乗っても行きの飛行機は周りの人が荷物を降ろしていても知らん顔していますが、帰りの飛行機では荷物を降ろそうとしている女性とかお年寄りの荷物をサッと立って手が伸びて降ろすことを手伝います。なかなかクルーズの効果はあったなと思いますが、そういったことで非常にマナーの勉強になると思ってカリブ海に連れて行っています。

 

 

 

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