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いまは農家でいろいろな仕事は化学薬品に頼っています。昔の農業はクローバーやレンゲの種を蒔いて根粒バクテリアを育てて、ワラを堆肥としてワラから好気性のバクテリアが増えて、これらバクテリアが稲の肥料になって稲が細胞を分裂して成長していったのです。そのために新たに施肥することはなく、特に肥料が必要なときには人糞肥料で補っていました。

ところが最近は農協の指導でワラは燃してしまえ、モミガラも燃してしまえ、そして人糞の肥料はまかりならぬということで土地は涸れてしまい、土壌バクテリアは死んでしまいました。どうしても化学肥料を施さないと農作物が育ちません。稲が育ちません。農薬の量は、だんだん増やさないと効かなくなるといった悪循環をしています。これが今日の日本の農業の実態です。

植物性食品は稲に代表して食品公害の例を申し上げましたが、動物性食品について言いますと、やはり高度成長期に入ってからの畜産物の量は日本ではとても増えました。乳を出すためのウシはこの10年間で1.6倍で203万頭に増えました。肉を食べるためのウシは1.4倍の265万頭に増え、ブタは3倍の1187万頭に増えました。ヒツジはほとんど輸入ですからデータには上がっておりませんが、卵を生むためのニワトリは1.6倍で約2億4千羽、食用にするためのニワトリ、ブロイラーはこの10年間でなんと8.4倍で約1億5385万羽も増えています。

高度成長期以降、家畜の育て方も加工業的畜産に変わりました。工場で物品を加工するのと同じやり方でやるわけです。飼料は日本ではほとんど輸入に頼っておりますから、国産の動物に外国の輸入の飼料、そして栄養剤やホルモン剤、抗生物質などの薬剤を混ぜて動物に与えることによって動物が一刻も早く太り、一日も早く生産をするといった政策が取られて、畜産と言っても半分工業的なやり方です。医薬品の動物への投与方法は飲み水に混入する、飼料に混ぜる、注射をする、皮下に埋め込むといった薬剤の与え方をしています。

ニワトリは鶏舎で飼いますが、鶏舎には窓をすっかり無くしています。またブタを飼う豚舎も窓を全く無くします。そうすると動物はどうなるか。全然運動をしなくなります。

 

 

 

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