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そしていままで健康だった人が咳が出る、頭痛がする、吐き気がするといったいろいろな症状が起こり、住民たちは州政府に対して環境調査を依頼しました。ところが恐ろしいことに、その土壌と水と空気の中に有害物質があるということで州知事はそこの立ち退きを命じ、小学校は閉鎖になりました。あとで調べるとその有毒物質はダイオキシンであったそうです。

国連でもダイオキシンとDDTやPCBは最上の発がん物質であると発表しているそうです。肝臓がん、乳がん、前立腺がんが主な症状で、これらは現代の医療では治療不能と言われています。そしてダイオキシンは大気中からと、ダイオキシンに汚染された食べ物からも人体に入ってきます。そして海に流れ出たダイオキシンはそれを動物性アメーバが食べ、アメーバを小魚が食べて、そして小魚を大きな魚が食べて、その魚を人間が採って食べてと悪循環になっています。海で死ぬ海洋ほ乳動物や魚の死が、やがては人間の将来をも暗示しているのではないかと思われます。

今度はカドミウム汚染について申し上げます。カドミウムは体内に入ると吸収されて腎臓障害を起こし、また骨からカルシウムが溶け出して人体内のカルシウムが少なくなって骨が軟化し、折れやすくなり、骨が痛む病気です。昭和25年、三井金属の上岡工業所が工場から出た廃液を近くの神通川に流し、そのために流域が汚染され、住民が大変苦しんだ病気です。最初は奇病に取りつかれたということで、ただ痛みがするからイタイイタイ病と言って騒いでいました。

結局、その工場から出た廃液の中にカドミウムが入っていることが原因であることがわかりました。その工場は30年間、その川にカドミウムの排水を流し続けていました。したがってそこの川の魚が汚染され、その地方の稲が汚染され、そしてカドミウム汚染の魚、カドミウム米を食べた住民たちがそういうイタイイタイ病にかかったわけです。2000名の患者と130名の死者を出した悲惨な薬害でした。

次に熊本の水俣市で起こった水俣病ですが、あれは水銀中毒でした。原因はチッ素工場がやはり30年間にわたり水銀をたれ流していたことがわかり、原因は水銀中毒とわかりました。たれ流した水銀がやはり水田に流れて稲を汚染しました。熊本大学で水俣奇病対策委員会が発足して、水俣病の症状を発表していましたが、視野が狭くなる、難聴、言語障害、歩行困難、運動神経の失調、ネコでも水銀中毒になるとクルリと引っ繰り返ってまともに歩けないという実験もありました。知覚障害、軽い精神障害、胎児が母胎内で水銀に冒されると奇形児になることもあるとか、そういった恐ろしい症状でした。

 

 

 

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