そういった食品に対する考えがいま少し覆されそうになってきています。というのは腐っていないから必ずしも安全であるかどうかはわからなくなりました。それは食品が薬剤で汚染されているわけですから、それで大丈夫かしらという疑問が湧いて来ます。お米にしても農薬に汚染されていないお米、添加物のないお米にはコクゾウムシがつきます。そうしたら一般の考えでは、これは虫がついているから品質が悪いという見方をしますが、近ごろではその反対で、人間には食品添加物がついているかどうかはわかりませんが、昆虫などは敏感でそういうのをわかるのです。
そうすると虫がついていないお米は食品添加物、農薬が降りかかっているから危ないのだという見方もされるわけです。食品の安全度の見方もこのへんでだんだん少しずつ変えなくてはならないような時期に来ているようです。私は料理教師ですので、食品の公害について、大ざっぱにおしゃべりさせていただきたいと思います。
食品公害とは一口に言って薬品公害とも言えるわけです。薬に汚染されて公害が生じるのであって、もともと食品そのものには公害などというものはありませんでした。特殊な例として毒物、自然毒があります。梅の青い間はマニグダリンという青酸毒が種の中にありましたし、フグの肝にもフグ毒、テトロドトキシンという猛毒があります。またこの間、中毒を起こしたというジャガイモの芽にもあります。料理教室ではジャガイモの芽は必ず取るようにと、普通教えていますが、近ごろ大勢の食事を扱う人などは機械がすべて皮もむいてしまいますから、ジャガイモの芽をいちいち取っていられないのかもしれません。
この間ジャガイモで食中毒を起こしたと新聞が報じていましたが、そういうこともあるのかもしれません。それから毒キノコで、キノコにもいろいろな毒があります。それらはみんな自然毒で、自然界に存在する毒でわれわれのご先祖はそういうことは知識として経験からわかってそれらを避けて生きてきました。
ところが近ごろになると石油から生産されたいろいろな化学物質があります。いまもここに来るときに海にたくさん浮かんでいましたプラスチックの容器とかナイロン等の化学製品が化学物質からいろいろ開発されましたが、それらは自然界には絶対になかったものです。それが戦後の日本では安くて軽くて丈夫でとても便利だということでみんな使いました。それらを人間が開発したのですが、そういったものを処分すると今度は大気が汚染される。いろいろな汚染物が世にはびこります。
また薬剤とか農薬などもとても便利で、農家の仕事は大変に楽になりました。農作物の米の生産もとても上がりましたが、そういうことが一方では農作物を汚染して人間のためによかれと思ってつくった化学物質がだんだんと人体を冒すことが最近になっていろいろわかってきました。