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そこでレジュメにも書きましたが、造水器、水を海水からつくる機械を持っています。これは蒸留水なのですが、もちろん港を出てある一定の距離まで行って、生活排水がないところで造水を始めるのですが、これはどういうことかと言うとメインエンジン、大きなエンジンを回しています。船のエンジンは水冷です。すると海水を汲み込んでメインエンジンのエンジンケーシングというか、自動車と一緒ですが、どんどん海水を回して、メインエンジンを冷やしています。

冷やし終わった海水が出てくると、エンジンに温められて海水温度が80度ぐらいで出てきます。80度ぐらいまで温かくなって出てきたものを、皆様のご家庭にある圧力釜、プレッシャータンクにどんどん入れます。それで80度でも沸騰するような圧力をかけます。すると出てきた冷却水が何の燃料もかけないで暖めないのに、自然に蒸発していきます。それを冷却して水にし、蒸留水は飲めませんから、それにミネラルを入れて、ミネラルのコントロールをして飲料水に変えています。

“飛鳥”の場合には直接海水からつくった飲料水は、皆様の飲み物には供していません。お風呂や手洗い、トイレの水などに使っていて、お部屋で飲む水は陸上から積み込みましたミネラルウォーター、またはタンクの水を飲んでいただくようにしています。アマゾンを走ったり、非常に生活排水の近くの港に次々と寄っているとき、ほとんど沖に出るチャンスがないときは、きれいなエリアを通れませんので、そういうときはどんどん下のタンクから使いますが、先ほど申し上げましたように500トンも使いますと、あっと言う間になくなります。

この500トンの量がどれほどかと言うと、どのように比べたらいいか。“飛鳥”に乗っていると、後ろのデッキにあるプールを見ていただいて、あれが50トンですから、あれの10杯分と言えば、皆さん「うわー、ものすごく使う」とわかっていただけるのですが、ここにはプールがありません。たとえば450トン、500トンと言うと、移民船が移民の方と1等、2等の船客を入れて、お客さんが1200人ぐらい、乗組員がだいたい150人ぐらい、お客様と乗組員で1300人ぐらいの船が持っている水の量です。そのころ造水機がないので、タンクの容量が450トンから500トンだったのです。

この場合全員が使っていた水が1日30トンぐらいで、450トンのタンクでも1日30トンしか使いませんから、十何日、2週間ぐらいもちました。それでいろいろな港に寄りながら補水して南米まで行ったと言うのですが、いまの水の使用量からすると夢みたいな話です。

 

 

 

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