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ただこのルールはつい最近になって若干変わりました。時代がどんどん進んでいて、ご承知のようにもうモールス信号の時代ではなくなり、モールス信号が廃止になりましたので、これはいまは変化しています。実は“タイタニック”から何十年も500キロヘルツの24時間聴取義務が船になされました。それが“タイタニック”以降です。

もう一つは映画をご覧になった方はわかるように、主人公の男性はエコノミークラス、下のデッキで生活をしていて、ガールフレンドが上のデッキで生活している。下のデッキの人たちが「たいへんだ、逃げよう」と逃げたときに、いろいろなところでドアが閉められていてデッキの上に出られなかった。映画では鍵がかかっていたのですが、鍵までかけたかどうかよく私もわかりませんが、いずれにしても脱出の順番が決まっていたということです。

女性、子ども、病気の方というのは世界の常識ですから、その方たちの話ではなく、一般的な話として、一番先はこのデッキ、2番目はこのデッキ、3番目はこのデッキというように脱出の順番が決まっていたのですが、いまの客船は“飛鳥”も含めて全部そうですが、乗っていらっしゃるお客様全員が一斉に脱出できるようなルートを確保しなさいというルールになっています。エバキュエーションのルートで、ですから人を待つ必要はないです。

皆様で客船に乗られた方もいらっしゃると思いますし、これから乗られる方もいらっしゃると思います。まずお乗りになって自分の部屋に行かれますと、ホテルに泊まったときの避難経路のようなものが必ずあります。「あなたのライフボートは何号艇です。何号艇に行くためにはこのように行きなさい」というルートが書いてあり、これは船の建造以来、慎重にお客様同士が混乱しないようなルートを考えています。

この大きな三つのポイントが“タイタイック”以降できた新しいルールで、これは国際ルールです。そういった意味でわれわれは“タイタニック”は記録すべき船だという意識は持っていました。まさかこのような大ロマンスで一気に映画がヒットして、皆様が“タイタニック”、“タイタニック”とおっしゃるとは思っていませんでした。

余計な話ですが、“タイタニック”が氷山にぶつかったポイントはニューヨークの沖ですが、北緯41度ぐらいのそれほど北ではないんです。4月10日ですから真冬でもない。実は今回の世界一周のときにもその近辺を通ってきました。なぜ通ってきたかというと、お客様が“タイタニック”の沈んでいる上を通ってくれと言うことで、上を通っても下が見えるわけではないのですが「このへんです」とお教えしました。実は常用航路と言うか、いつも船が通っている航路です。ですからいまでも記録はできているのですが、4月のあの季節は氷山が当然流れてくる海域でもあったし、時期でもあったということです。

 

 

 

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