“フロンティアスピリット”という船は8700トンの探検客船ですが、世界でも4隻ぐらい南極、北極、アマゾンへ行く探検客船というのがあります。主にクルージングエリアが南極半島も含めての南極大陸、北極、私は北極に2回行っていますが「北極はどこを走るのか」という質問をよく受けます。ノースウエストパッセージといって、ヨーロッパ人が勝手に考えたパッセージなのですが、イギリスを中心に見てノースウエスト(北西)に進んで極東に来ようという、要は北極海を通って、カナダの北からベーリング海に抜けようという航路です。
それとは逆にロシアの北側を通過してくるパッセージがノースイーストパッセージ、これはすべてイギリス人が自分のところを中心にして考えた呼び名ですので、日本から考えるとまったく逆になります。北西航路と言っていますノースウエストパッセージは、1850年ぐらいに開設されて以来、まだ今年で60隻ぐらいしか通ったことがない、たいへんにハードな航路です。
私がここに1回目のチャレンジをしたときは氷にはばまれて戻って来て、2回目にグリーンランドからポイントバーローと言うかベーリング海に抜けた航海に成功しました。そのときにわれわれは「おまえらはアムンゼンが最初に通ったときから55番目だ」とカナダのコーストガードに言われ、それからまだ5年ぐらいしか経っていませんから、まだそれほどの船が通っているとは思いません。
その“フロンティアスピリット”に2年ぐらい乗り、それから“飛鳥”の船長をしています。いままで“飛鳥”が行ったロングクルーズ、長いクルーズはほとんど乗船しています。“飛鳥”の話はこれからおいおいとさせていただきたいと思っていますが、思い込みと言うか、皆様のコンディションも考えずに勝手にべらべら喋りますので、もしわからないときがありましたら、大きな声で言っていただければと思います。喋り慣れておりませんので申しわけございません。
乗船中にキャプテントーク、ナビゲーショントーク、航海よもやま話などと言って「船長、何か話をせい」と引っ張り出されるときが多々あります。そのようなときには前にいらっしゃる方が全部お客様なので、ある程度お顔を拝見している人がたくさんいらっしゃるのですが、今日はまったく初対面の方たちばかりで、何を言い出すか緊張していますので、そのへんはお許しいただきたいと思っています。