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1]年金への拠出額と給付額に不平等感がある。付加年金(ATP)は、前述のように就労所得のうち所得の高かった15年間しか換算しない。これは、何らかの理由で一定期間しか高収入のなかった人にも高レベルの年金を保障することができるが、一方で長い期間高所得者として働き、年金拠出をしてきた人にとっては不平等感がある。

2]平均余命の伸びにによる問題が生じている。ここ数十年で平均余命が大きく伸びたことにより、同レベルの給付を維持するには、年金給付開始年齢を引き上げるか、負担を重くせざるおえない。

3]ATP(付加年金)財政は収支のバランスがとれない場合がある。現行制度では、ATPは経済成長とは無関係に物価調整されているため、経済が不況に陥り、年金制度への収入が減少しても、支出は増加してしまう。すなわち現行のATP制度では、制度の支払い能力を超えた支出をしなければならないことがある。

4]また高成長が継続する場合、より多くの人が基礎額の7.5倍以上の収入を得ることになり、従前所得に対する公的年金の意味が縮小することになる。ATPが物価調整のみによって換算され、経済成長を加味していないために起こる問題である。

 

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所得に基礎をおいた年金は、就労時に年金へ拠出したことによって給付権を得ることができる。また、社会保険からの給付−例えば、疾病によって休職した際の所得保障や失業保険、育児休業時に給付される両親手当−などについても、所得として年金の対象となる。さらに、四歳以下の子供の看護や高等教育を受けた期間などについても、年金の対象となる。年金額は、どれだけ年金拠出をしたかという拠出額によって、また年金給付開始時の平均余命によって決まる。したがって、現行制度のように就労期間中の高所得であった15年間の所得によってのみ換算されるのではない。

拠出額は所得の18.5パーセントである。このうち16パーセントは、現在の年金受給者へ配分されるが、拠出した金額は後の年金受給の際に算出の基礎になる。残り2.5パーセントについては、拠出した個人が資金の運営者を選択することができる。この2.5パーセント部分は、私的な年金保険に類似した機能を果たし、プレミア年金(Premie-pension)と呼ばれる。

さらに、新年金制度は、財源に対応したシステムとなっている。すなわち、年金権となる拠出金と、支払われる年金は、これまでの物価インデックスのみによる調整ではなく、一般所得の推移によっても調整されることになった。この所得調整によって、実質一般所得が上昇する好景気においても拠出金の価値が保たれ、マイナス成長期には、年金受給者は就労者と同様に、所得が減少し、結果として購買力も弱まることになる。

 

 

 

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