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しかし、この制度は発足からすでに30年以上経っており、最近ではさまざまな問題が指摘されるようになった。

現行制度の概略は以下のようになる。スウェーデンにおける高齢者の年金は、主に公的年金と協約年金に大別される。なかでも公的年金制度は、高齢者の経済生活の最低基盤を支える重要な制度である。高齢者に給付される公的年金には、国民基礎年金(FP)、国民付加年金(ATP)がある。(なお、以下国民基礎年金は基礎年金、国民付加年金は付加年金あるいはATPと記す。)基礎年金は、すべての国民に最低限度の生活を保障することを目的とし、付加年金は従前労働に対応して年金を支給することを目的としている。基礎年金の受給資格は40年間スウェーデンに在住しているか、30年間の年金換算労働が必要である。この年限に満たない場合は、在住年数あるいは労働年数に比例して減額される。基礎年金などの年金の算出には、毎年設定される基礎額が基準になっている。1999年の基礎額は364,000クローナであった。同年の基礎年金は、基礎額の96パーセントであり、夫婦の場合は1人78.5パーセントである。夫婦の場合でも、片方がグループホームなどのケア付住宅に住む場合はそれぞれ単身の年金を受け取ることができる。年金の受給は、65歳になった月から開始される。ただし61歳からも受給可能であり、65歳以下で年金を受給する場合は、月ごとに0.5パーセント早期に受給した分減額される。また70歳まで年金の受給開始を延ばすこともでき、この場合は月ごとに0.7パーセント増額される。

付加年金の受給には、16歳以上64歳までの間に最低3年の年金換算労働が必要である。満期の受給には30年の労働が必要であり、30年に満たない場合は年数に比して減額される。付加年金は1960年に導入されたので、これ以前の所得は対象とされない。付加年金は従前平均所得の60パーセントである。この従前平均所得は、就業期間のうち高所得であった15年間の所得を、基礎額をもとにインフレ調整し、平均化した額である。なお、基礎額の7.5倍を越える所得は年金算定の対象とされない。

基礎年金が少額だったり、付加年金を全く受けていなかったりあるいは少額である場合には、年金補助を受けることができる。年金補助は、最高基礎額の55.5パーセントであり、1999年には20,202クローナであった。

基礎年金は主に、雇用者拠出金と国からの特別充当金によって賄われており、付加年金は主に雇用者拠出金と国民年金基金によって賄われている。

これら現行の公的年金は高齢者に最低限度の経済生活を保障しており、高齢者の生活に重要な役割を果たしている。公的年金制度は経済保障としては高レベルであり評価できうるもである。しかし、今後の人口構造の変化や低成長期時代に耐えうるものであるかが議論されてきた。とりわけ、1990年代初めのマイナス成長期には、財政運営上の問題が浮き彫りになった。現行制度の問題点は、以下のように整理される。

 

 

 

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