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年金給付の際の調整には、1.6パーセントの成長率が基準とされる予定である。例えば、物価上昇が3.1パーセント、実質的な一般所得の上昇が1.6パーセントである場合、基準値と所得上昇が同じなので、3.1パーセントの物価上昇分のがそのまま換算される。また、所得上昇が0.6パーセントで、基準値より1パーセントマイナスの場合は、3.1から1を差し引いた2.1パーセント分が換算される。反対に所得が2.3パーセント上昇した場合は、基準値を上回る0.7パーセント分が上乗せされ、3.8パーセント分が換算される。このように年金所得は一般就労者の所得同様に、経済成長に連動すことになった。ただし、この調整方法は拠出率18.5パーセントのうちの16パーセント部分に適用され、2.5パーセント部分のプレミア年金部分については、資金運用に任されている。

また、現行ATPの上限は基礎額の7.5倍までの所得であるが、2001年から一般所得の上昇に伴って引き上げられることになった。

基礎保障年金は、年金換算される所得が全くなかったり、あるいは少額である場合に、現行の基礎年金と年金補助に代わって、最低限の生活を保障するものである。最低保障額は、単身者で基礎額の2.13倍、夫婦の場合は1.90倍と提案されている。基礎保障年金に関しては、物価インデックスによって調整される。

新制度による年金受給は、1954年生まれ以降に適用され、1938年から1953年生まれの者に関しては、新制度および現行ATP制度の適用を受ける。また、1937年以前に生まれた者については現行制度のみが継続して適用される。

 

このようにスウェーデンの年金制度はまさに過渡期であり、新年金は高齢時代、低成長時代の財政構造でも耐えうるシステムになることが期待されている。

多田葉子(同志社大学文学部社会学科講師)

 

 

 

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