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言いかえれば、自立財政は、国からの詳細なコントロールを不可能にし、地域の事情にあったサービス提供を可能にしている。しかし一方で、財政規模の脆弱な自治体に、サービス提供に必要な財政基盤を与えることも重要である。スウェーデンの包括補助金は、主として平等化補助金制度を基礎に分配されている。この平等化補助金制度の目的は、自治体間の財政基盤の差を縮め、全国どの自治体に住んでいても平等な住民サービスが受けられるようにすることである。

平等化補助金の歴史は古く、その起源は1966年に遡ることができる。この後、時代の要請に応じて、さまざまな方式で平等化補助金制度が実行されてきた。現行制度は96年より施行されたが、この制度は93年の平等化補助金制を引き継ぐ形となった。

平等化補助金制度が採用されている理由は以下のように整理できよう。福祉国家スウェーデンでは、前述のように自治体がさまざまな福祉サービスの提供主体である。しかし、各自治体の財政力にはかなりのバラツキがある。例えば、1996年住民一人当たりの課税可能所得は、東海岸に浮かぶ島のボーリィホルム市(Borgholm kommun)の72,837クローナからストックホルム県のダンデリード市(Danderyds kommun)176,155クローナまでの開きがある。この年の全国市・住民一人当たりの課税可能所得平均は101,904クローナであった。(文献2])また、行政サービスに必要とされる費用も市によって大きな差がある。例えば、学校業務の例をあげると、就学年齢の児童の人数によって市が学校業務に必要とする費用は大きく異なってくる。また、生徒一人当たりの人件費を考えると、一クラスに何人の生徒がいるかによっても費用に差がつく。したがって、一般に、過疎都市では一クラスの人数が少なく、またスクールバスなどを利用した生徒の送り迎えにも費用がかかるため、学校業務の費用は他の市に比べて割高になっている。

こうした自治体間の財政基盤・構造の差に関係なく、自治体がその状況にあったサービス提供をする際に、平等なサービス提供ができるような基盤を与え、自治体間格差が生じないように歯止めとなる制度が平等化補助金制度である。ここでは1996年より実施された新平等化補助金制度について詳しく説明しよう。

 

96年1月より施行された平等化補助金制は大きく、収入平等化補助金、費用平等化補助金、住民一人あたり対して支払われる一般国庫補助金、および導入調整金から構成されている。

収入平等化補助金は、文字通り自治体の収入の平等化を目的としている。すなわち、自治体間の税収力が平等になるように、税収力の平均値を比べ、税収力が平均より低い自治体が平均より税収力の高い自治体から国を介して補助金を受け取る。したがって、収入補助金制度は、国を介して行われるので国庫補助金として位置づけられているものの、市間あるいは県間の財政調整であり、国からの財政援助ではない。

 

 

 

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