第II部
日本における年金改革の動向
はじめに
現在検討されている年金改革法案は、総給付を20%カットすることを目的としている。その具体的内容は、一つは報酬比例年金の給付水準を5%下げる。もう一つは、現行60歳である報酬比例年金の支給開始年齢を2013年から2025年までに65歳とする、というものである。
年金保険料の凍結と年金給付の既裁定分の物価スライド化は決定し、年金保険料凍結にあたっては、ここ5年以内に基礎年金の国庫負担割合を見直すとしている。現行の国家負担割合3分の1を5年以内に2分の1に引き上げるということである。その財源を何にするかはまだ決まっていない。
1 負担の重い年金保険料
今年度当初予算では、国の一般歳出は総額べ一スで82兆円弱である。その歳出のうち税金で賄う部分、国税総額は47兆1千億円である。歳出に比べ税金の割合が極端に小さく、財源不足は主として国債の発行でやりくりされているが、財政的には非常に追いつめられている状況である。
今年度当初予算で所得税は15兆7千億円、法人税は10兆4千億円。消費税は(地方消費税を含む)12兆8千億円。地方財政の柱である住民税、固定資産税は9兆円前後、地方自治体に納める法人事業税は4兆2千億円、地方財政もかなりの財政赤字を計上している。(図1「年金保険料が突出して重い」)
一方、強制的に国に納めることになっている社会保険料は総額で54兆5千億円であり、国税総額47兆円よりも社会保険料の方が金額が大きい。国税収入総額より社会保険料総額の数字の方が多いという逆転は昨年の決算から起こっている。
社会保険料の中で番ウェイトの大きいのは年金保険料である。今年度予算によると、公的年金(厚生年金、国民年金、共済年金、厚生年金基金の代行相当分)保険料は29兆9千億円になる。医療保険料は約17兆4千億円となる。年金保険料と医療保険料は所得税、法人税の水準より高い。
しかし、赤字であれば法人税を払えとは言われない企業も、人を雇い給与を払えば年金保険料、医療保険料は払わなければならない。